25年前にヒト胚から初めて単離された胚性幹細胞(ES細胞)は当時、医療への応用で輝かしい展望が指摘されていた。だが今に至るまで、まだ治療法として確立されたものはない。
新型コロナウイルス感染症の感染者が増加の兆しを見せ、ワクチンの追加接種もまもなく始まる。新たな変異株にワクチンはどの程度太刀打ちできるのだろうか。
25年前にヒト胚から最初に樹立されたES細胞の研究には、膨大な時間と資金が投入されてきた。だが、まだ承認済みの治療法を生み出せていない。
バイエル傘下のバイオテック企業などが、12人のパーキンソン病患者の脳に、胚性幹細胞(ES細胞)由来のドーパミンニューロンを移植する治験を実施した。同社によると、現時点では症状が緩和している被験者もいるという。
脳コンピューター・インターフェイスは、全身麻痺などでコミュニケーション能力を失った人々への福音となる可能性がある。しかし、コミュニケーションを取る方法がまったくない人たちが、調査研究に参加することは倫理的な観点から難しい。
米国で今年に入ってから医薬品不足が顕著になり、患者の治療に深刻な影響をもたらしている。きっかけはインドの医薬品工場の閉鎖だが、根本的な原因は別のところにある。
脳活動を発話に変換する新たな研究成果が発表された。発話に使う唇や舌の筋肉を制御する脳内信号を脳インプラントで捕捉し、その信号をAIで言葉に変換する。
米国ではオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の過剰摂取による被害が深刻な社会問題になっている。オピオイドに代わる鎮痛剤の開発は失敗の連続だったが、ようやく光が見えてきた。
医学・生物工学のさまざまな最新トピックを紹介してきた記者が、過去10カ月の記事を振り返り、印象に残っているものを紹介する。
マイクロプラスチックは、飲み水、血液、そして地球上で自然のままの姿を保っていると思われている場所にさえも現れている。マイクロプラスチックが人間にどのような影響をもたらしているかを知ることは重要だ。
精子注入ロボットを使った体外受精(IVF)で昨年、2人の赤ちゃんが誕生した。人手による難しい作業を自動化することで、不妊治療にかかるコストを劇的に下げるのが狙いだが、さらにその先を見据えるスタートアップもある。
エムポックス(サル痘)の感染者数が今年になってからアジア諸国で増加している。新型コロナに比べ規模は小さいものの、中国政府の対策は新型コロナウイルス感染症の教訓を活かしているとは言い難い。
バイオテクノロジー企業「イー・ジェネシス(eGenesis)が、遺伝子編集したブタの心臓をヒヒの赤ちゃんに移植する実験を実施している。早ければ来年にも、重篤な心疾患を抱えるヒトの乳幼児にブタの心臓を移植したい考えだ。
CRISPR技術を使って微生物を改変する研究が進んでいる。改変した微生物をヒトの腸内に住みつかせて健康維持に役立つ物質を分泌させたり、ウシが吐き出す温室効果ガスであるメタンの量を減らしたりすることが狙いだ。
WHOが緊急事態の終了を宣言し、報告される感染者数が激減するなど、長く続いたパンデミックが収束化している。だが、ウイルスが消え去ったわけでもなく、多くの問題も残っている。現状を整理してみよう。
細菌に感染するウイルス「ファージ」は100年以上前に発見されたが、抗生物質が広く普及したため見向きもされなくなっていた。だが、薬剤耐性の問題が深刻化する今、ファージが脚光を浴びつつある。
個人向けの遺伝子解析サービスでジーンクエストを創業した高橋祥子は、サービスの利用拡大と遺伝子研究プラットフォームを基盤に研究を重ね、誰もが自分の遺伝子情報を知っている世界を目指す。
ある研究者が本物に近い「人工ヒト胚」を作り上げたと英紙が報道し、物議を醸している。人工胚の開発が、扱いの枠組みを決める前から、研究室間の無謀な競争の様相を呈している。
ボストンで開かれた国際幹細胞学会(ISSCR)で、若返りに関する講演に聴衆が殺到し、警察が出動する騒ぎとなった。「究極の偉業」に対する科学者の関心の高まりを象徴する出来事だ。
ヒトが食べたものは腸内のマイクロバイオームの状態を変化させる。便から採取したマイクロバイオームを分析することで、その人に合わせた健康改善へのアドバイスを作れるかもしれない。
モンテネグロの高級リゾート地で、長寿を追及する人たちが集まる長期イベントが開催された。数日間だけ現地で参加した記者の感想をお届けする。
胎児を対象にした脳外科手術の成功が先月、報じられた。胎児は脳血管に致命的な奇形があり、誕生後すぐに命に関わる重篤な状態に陥る可能性があった。今後、別の症状についても子宮内で治療できる可能性があるという。
脊髄損傷を負った男性が、脳にインプラントを埋め込む臨床試験に参加した。装置のおかげで手を動かせるようになった彼は、「人生が変わった」と語る。だが試験終了後、装置を取り外した今、彼は何を思っているのか。
メーカーの倒産によって脳インプラントの除去を余儀なくされたてんかん患者の女性は、大きな喪失感を経験した。今後数年で脳インプラント市場が拡大し、手術を受ける人が増えるほど、切実な問題になる可能性がある。
モンテネグロに期間限定で出現した街を一時的な拠点とし、老化を遅らせたり逆転させたりするためのバイオハックや医薬品開発の規制緩和を奨励する法域を作る計画が討論された。