米初のヒト胚遺伝子改変は「成功」したのか?当事者が批判に反論
オレゴン健康科学大学の研究者がCRISPRを用いてヒト胚の遺伝子突然変異を修正したとする昨年の報告に対し、結果の正当性や安全性に関する批判が相次いだ。実験に携わった研究者らは、「体外受精遺伝子療法」の開発を今後も続けると明言した。 by Antonio Regalado2018.08.14
クリスパー(CRISPR)を用いてヒトの胚の遺伝子を編集する世界最大規模の取り組みに携わる研究者らは、他の科学者たちからの批判に直面しながらも、自身が「IVF(体外受精)遺伝子療法」と呼ぶ技術の開発に向けた取り組みを続けると明言している。
2017年8月、米国オレゴン州ポートランドにあるオレゴン健康科学大学のシュークラト・ミタリポフ教授は、数十個のヒト胚の遺伝子突然変異の修正に成功したと報告し、世界中のニュースの見出しを飾った(実験の一環として、これらの胚は後ほど破壊された)。
初期段階のヒト胚を用いたこの研究の結果により、やがては実現するであろう遺伝子改変された初の人間の誕生に「非常に近づいた」とミタリポフ教授は述べた。
この画期的な研究は、衆目を集めると同時に、批判も招いた。生物学的見地から見て信じ難く、不注意によるエラーや人為的なものだとして、研究結果をすぐさま批判した研究者もいた。
現在、批判者らは、科学誌『ネイチャー』上で珍しい発言の機会を得ている。オレゴン健康科学大学の研究に対する2つの批判と、ミタリポフ教授と彼の研究仲間である韓国、中国、およびカリフォルニア州ラホヤのソーク研究所の31人の研究者による詳細にわたる返答が掲載されたのだ。
細胞のDNAに未知の損傷を与える可能性があるという広く知られたクリスパーの傾向が、この科学的論争の的となっている。
クリスパーがDNAに対して与える損傷を検出するのは、いかなる場合も困難だ。十数個の細胞から成り、肉眼では見えないほど小さい受精後数日のヒト胚を扱う場合であればなおさらだ。
豪州アデレード大学のマウス遺伝学者であるポール・トーマス教授は、ミタリポフ教授の研究結果を批判する報告書の著者の一人だ。トーマス教授は、クリスパーが引き起こす遺伝子欠失などのエラーを見落としたら、重度の先天性欠損を持つ子どもが生まれるのではないかと懸念している。
「遺伝子の大規模な欠失を検出できなかった場合、潜在的な臨床応用において、悲惨な結果につながる可能性があります」とトーマス教授は記している。そして、クリスパーが実際に胚に何を引き起こすのかを評価するためのより良い手法の必要性は「いくら誇張してもし過ぎることはな …
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