4本の腕を持つヤメン・サライジは、そのうちの2本で自身をハグしていた。
ハグしているのは、背中に背負ったバックパックからひょろりと伸びたロボットアームだ。このロボットアーム、実はサライジと同じ視点で周囲を見渡せるVR(実質現実)ゴーグル「オキュラス・リフト」を装着した別の人間が遠隔で操作している。バックパックに接続された複数台のカメラのおかげで、操作者の視界は良好だ。ロボットのアームとハンドは、操作者が持つ携帯型のコントローラーによって操られているのだ。
ロボットアームがサライジをハグから解放する。ロボットの右手がサライジにハイタッチすると、彼は顔をほころばせた。
東京にある慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で特任講師を務めるサライジは、「フュージョン(Fusion)」と呼ばれる「バックパック上のロボットアーム」プロジェクトの開発を主導し、人が機械を自分の身体の一部のように使って能力を増強する研究を共同で進めている。日本の研究室からビデオチャットで見せてくれたロボットの動きの中にはひょうきんなものもあったが、サライジ講師は遠隔地からの動きの指導や理学療法にこのロボットアームが役立つと考えている。
ハグをしたりハイタッチをしたりするほかに、ロボットアームとハンドの操作者は物を拾い上げたり、バックパックを背負う人間の腕や手を動かしたりもできる。ロボットの手の部分を取り外して、代わりにバックパック装着者の手首を覆うストラップをつければ、バックパック装着者の腕を本当に遠隔操作できる。 サライジ講師が慶応大学および東京大学の研究者とともに製作したこの装置は、カナダのバンクーバーで8月に開催されるコンピュータグラフィックス …