KADOKAWA Technology Review
×
BMW Built a Power Plant from Old Electric-Car Batteries

電気自動車の使用済み電池で
BMWが発電所を建設

自動車メーカーは、使用済み電池の活用方法を模索している。 by Michael Reilly2016.09.27

電気自動車革命からまだ数年後しかたっていないのに、自動車メーカーは、使用済み電池をどう処理するのか、という課題にもう直面している。答えのひとつは、巨大な電池の山を送電網につなぐ発電所に変えることだ。

電池テクノロジーに必要とされるブレークスルーが実用化できなければ、当面はリチウムイオン電池を使い続けるしかなさそうだが、必ずしも悪いこととはいえない。リチウムイオン化学は急速には進展していないが、電池価格は下がり続けており、電気自動車の販売数はいよいよ普及期に至る転換点にあるのかもしれない

しかし他の電池と同様、電気自動車の電池も劣化する。現在の電池の劣化度合いでは、電気自動車の電池寿命は、おおよそ8~10年だ。寿命を過ぎた電池がすぐにゴミ同然になるのではなく、自動車の走行可能距離がカタログ値から乖離する程度に電池容量が減少してしまう、という意味だ。

For BMW's batteries, the i3 is not the end of the line.
BMWの電池にとって、i3は製品の最終用途ではない

そこでBMWは、使用済み電池の再生方法の検討に時間を費やしている。たとえばBMWは、テスラのパワーウォール(家庭でエネルギーを蓄えられる)に似た製品として、使用済み電池を消費者に試験販売した。

現在、構想は一回り大きくなり、BMWはドイツ、ハンブルクに自動車100台分の電池を束ねた、送電網に接続可能な蓄電施設を完成させた。2.8メガワット時のエネルギーを保存でき、スイッチを入れるだけで最大で2メガワットの電力を送電できる発電所は、需要のピーク時に電力の不足分を送電網に供給するのに最適だ、と担当者はいう。

電気自動車が本当に普及するなら、中古電池の発電所の登場は、そう遠くないだろう。

(関連記事:Electrek, “Why We Still Don’t Have Better Batteries,” “The 2020s Could Be the Decade When Electric Cars Take Over,” “Race for a New Grid Battery Hits a Speed Bump”)

人気の記事ランキング
  1. The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
  2. EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想
タグ
クレジット Image courtesy of mariordo59 | Flickr
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る