軍事関連の基礎研究に資金を提供する米国国防先端研究計画局(DARPA)は2017年、半導体チップの進歩を支援するために「エレクトロニクス復興イニシアチブ(Electronics Resurgence Initiative:ERI)」と呼ばれる予算15億ドルの5カ年計画を開始した。米国のチップ開発・製造に革命をもたらす可能性のあるアプローチを探索する、初期の研究チームの秘密が明らかになってきた。
ハードウェアのイノベーションに関しては、近年ではソフトウェアの進歩の脇役のようにみなされている。これはいくつかの理由から、米軍にとって悩みの種となっている。
1つの時代の終わり
最優先で対処しなければならない課題は、ムーアの法則が限界に近づいていることだ(「Moore’s Law is dead. Now what?」参照)。ムーアの法則とは、半導体チップ上に集積されるトランジスター数がおよそ2年ごとに2倍になるという経験則である。ムーアの法則が限界を迎えれば、新しいアーキテクチャや設計法によってチップ性能が向上しない限り、米軍が依存している電子工学の進化が止まってしまう恐れがある。
集積回路を設計する際のコストの上昇や、半導体の設計や製造への外国からの投資の増加も心配の種だ。外国からの投資というのは、もちろん「中国からの」ということだ(「AIチップで一発逆転狙う、中国半導体産業の野望」参照)。
ERIの予算は、DARPAがハードウェアに投じる通常年間予算のおよそ4倍にもなる。初期のプロジェクトは、ERIで重点的に取り組む3つの分野を反映している。チップの設計、アーキテクチャ、そして材料とその統合である。
プロジェクトの1つは、新しい …