ムーアの法則終焉で米軍が目指す、半導体の「クラフトビール」革命
知性を宿す機械

DARPA has an ambitious $1.5 billion plan to reinvent electronics 「ムーアの法則」終焉で
米軍が目指す、半導体の
「クラフトビール」革命

ムーアの法則の終焉とともに米国が半導体チップにおける競争力を失ってしまうことを懸念するDARPAは、予算15億ドルの5カ年計画を始めた。半導体産業の復興をかけ、新たなチップ設計・開発手法の発見を目指す。 by Martin Giles2018.08.06

軍事関連の基礎研究に資金を提供する米国国防先端研究計画局(DARPA)は2017年、半導体チップの進歩を支援するために「エレクトロニクス復興イニシアチブ(Electronics Resurgence Initiative:ERI)」と呼ばれる予算15億ドルの5カ年計画を開始した。米国のチップ開発・製造に革命をもたらす可能性のあるアプローチを探索する、初期の研究チームの秘密が明らかになってきた。

ハードウェアのイノベーションに関しては、近年ではソフトウェアの進歩の脇役のようにみなされている。これはいくつかの理由から、米軍にとって悩みの種となっている。

1つの時代の終わり

最優先で対処しなければならない課題は、ムーアの法則が限界に近づいていることだ(「Moore’s Law is dead. Now what?」参照)。ムーアの法則とは、半導体チップ上に集積されるトランジスター数がおよそ2年ごとに2倍になるという経験則である。ムーアの法則が限界を迎えれば、新しいアーキテクチャや設計法によってチップ性能が向上しない限り、米軍が依存している電子工学の進化が止まってしまう恐れがある。

集積回路を設計する際のコストの上昇や、半導体の設計や製造への外国からの投資の増加も心配の種だ。外国からの投資というのは、もちろん「中国からの」ということだ(「AIチップで一発逆転狙う、中国半導体産業の野望」参照)。

ERIの予算は、DARPAがハードウェアに投じる通常年間予算のおよそ4倍にもなる。初期のプロジェクトは、ERIで重点的に取り組む3つの分野を反映している。チップの設計、アーキテクチャ、そして材料とその統合である。

プロジェクトの1つは、新しい …

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