損傷を受けた神経を修復する体の能力には謎が多い。神経学者にとって、脳と脊髄から成る中枢神経系の損傷を治せないことは明らかなようだ。しかし、体の他の部位にある末梢神経系の損傷となると話は別だ。
体が特定の種類の末梢神経の損傷を修復できることは、数多くの証拠により示されている。だがそれは、ある特定の状況にのみ可能なことであり、修復方法も限られていることが多い。そのため、切断された神経を再結合し、修復と再生を促す新たな方法の開発に大きな関心が寄せられている。
オーストラリアのウェスタンシドニー大学のアシュール・スリオーら数名の研究者が今回発表した研究が重要なのは、そうした理由による。スリオーらの研究チームは、生分解性のスキャフォールド(足場)を用いて切断された神経を再結合し、体外で生成した磁場を用いて再結合した神経に電気刺激を与える新たな方法を生み出した。
同研究チームによると、この手法は、神経を再生するための従来の方法と異なり、最小限の侵襲で、ラットの体内の切断された神経を修復できるという。
近年になり神経学者たちは、短時間の電気刺激が神経の修復と再生を大幅に改善することを発見した。
だが、この種の治療法を完全なものにするには、いくつかの重大な課題がある。一つは、切断された神経は縫い合わせられることが多いが、その際の縫い目が傷跡を残し、炎症を引き起こす大きな原因になることである。
電気刺激を与える方法も課題となっている。多くの場合は、体の外側に伸びるワイヤーにつながった伝導性バンドを神経の再結合部位の周りに取り付けて …