福島第一原発事故がカリフォルニア・ワインに残した確かな痕跡
大気圏内の核実験では、大量の放射性物質が大気中にまき散らされる。1950年代から1980年までのワインには、その痕跡が克明に現れている。日本の福島第一原発の事故に由来するセシウム137が当時生産されたカリフォルニア・ワインから検出されるかどうかを薬理学者が調べた。 by Emerging Technology from the arXiv2018.07.23
1950年代を通して、米国やソビエト連邦は地球の大気圏内で熱核兵器の実験をした。こうした核実験は大量の放射性物質を大気中に放出した。核反応によって海の重水素が発火し、地球が悲惨な火の玉となって破壊されるのではないかという恐れを生んだくらいだ。
大気圏内での核実験は、1980年に中国が計画を終了した際に終わった。しかし、核実験により、放射性核種の痕跡が地球に長期間残ることとなった。最もわかりやすい痕跡のひとつにセシウム137がある。これはウラン235の核分裂で生じる放射性物質だ。
セシウム137は大気中に放出されると、世界中に広がって食品に微量に混入する。こうした混入はまったく歓迎すべきものではない。しかし、2001年にフランスの薬理学者のフィリップ・ユーベルが、この痕跡を使うことで、ボトルを開けずにワインの生産時期を特定できることを発見した。
この手法はすぐに、若いワインに古いビンテージの年号ラベルを付けて価格を上げるワイン詐欺との戦いにおいて有効な武器となった。こうした詐欺は様々な種類の化学薬品や同位体分析で発見できるが、こうした方法ではワインのボトルを開けなければならず、ワインの価値を無駄にしてしまうことになる。
一方、セシウム137は放射性物質であるため、開栓せずに検査することが可能だ。セシウム137は、存在する同位体の量に比例して際立った量のガンマ線を放射す …
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