6月に米国エネルギー省(DOE)が世界最速のスーパーコンピューターである「サミット(Summit)」を発表すると、米国内はお祝いムードで盛り上がった。スーパーコンピューターの処理性能における競争は今や、次の重要なマイルストーンの達成に舞台を移している。そのマイルストーンとは、エクサスケール・コンピューティングである。
今後数年のうちに、1秒間に100京(10の18乗)回の計算を実行する、つまり1エクサFLOPSの処理性能を持つコンピューターを構築しようというのだ。1エクサFLOPSは、サミットの5倍の処理性能にあたる(下図参照)。エクサスケールの機械が1瞬でできることを人手でしようとすると、地球上のすべての人間が4年以上にわたって毎日毎秒、計算をし続けなければならない。
エクサスケール・コンピューティングの驚異的なパワーにより、研究者は気候科学からゲノミクス、再生可能エネルギー、人工知能(AI)に及ぶ多くの分野で、非常に複雑なシミュレーションの実行が可能になり、進歩が加速するだろう。「エクサスケール・コンピューターは科学のための強力な道具です。(粒子)加速器や巨大な望遠鏡のようなものです」とテネシー大学のスーパー・コンピューティング専門家、ジャック・ドンガラ教授はいう。
スーパーコンピューターは、製品設計をスピードアップしたり新材料を特定したりするのに使うことで、産業界でも役に立つだろう。国家安全保障分野にも利用できるので、軍や情報機関も手に入れたがるはずだ。
エクサスケールのマイルストーンの達成は、テクノロジーのリーダーシップを巡って中国と米国の間で勃発している競争の一部だ(日本と欧州もそれぞれ独自のコンピューター開発に取り組んでおり、日本では2021年、欧州では2023年には稼働が予定されている)。
2015年に中国は、2020年末までにエクサスケールのコンピューターを製造する計画を発表した。この野心的な目標の達成が軌道に乗っていることは、この1年ほどの間のいくつかの報告によって示されている。だが、中国におけるエクサスケールの取り組みに協力する北京航空航天大学のデ …