KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
First evidence that amino acids formed soon after the Big Bang

アミノ酸の生成はビッグバン直後、生命の起源に一石

宇宙のビッグバンによって大量の水素とヘリウムが生成され、星の内部の核融合反応でより重い元素が作られていったことはよく知られている。しかし、こうした元素から生命の起源となるアミノ酸のような複雑な分子がどのようにして生まれたのかについてはまだよく分かっていない。科学者たちは隕石に含まれる分子の質量分布と化学進化のシミュレーションの比較で、生命が誕生する約90億年前の初期宇宙からアミノ酸が存在していたことを示した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.07.17

1952年、化学者のスタンリー・ミラーとハロルド・ユーリーは、約40億年前の地球上の状態を再現する有名な実験をした。水、アンモニア、メタン、水素を、密閉したフラスコの中で混ぜ合わせて加熱し、雷を模した火花で刺激を与えたのだ。この実験が有名なのは、その数日後、フラスコ内がアミノ酸などの複雑な有機分子で満たされ始めたからである。アミノ酸は、生命を構成する上で基本となる要素だ。

実験の結果から暗示されることは明白だった。生命を作り上げる基本要素が簡単に作れるのなら、生命そのものを創り出すことも難しくないのかもしれないということだ。宇宙の中では、環境さえ整っていれば、どこにでも生命が生まれるのかもしれない。そんな可能性が暫定的に浮かび上がった。

その後、天文学者たちは、他の惑星、小惑星、さらには星間空間からも同じ分子が存在する証拠を見つけてきた。

そして、いくつかの興味深い疑問が生まれた。宇宙において分子は最初どのようにしてでき上がったのか。より複雑な分子ができ始めたのはいつだったのか。そしてこのことから、生命の起源について何が示唆されるのだろうか。

現在、米シアトルのシステム生物学研究所(Institute for Systems Biology)に所属するステュワート・カウフマン博士と、ハンガリーのブダペストにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究者たちの研究から1つの答えが得られている。博士らは初期の宇宙において分子が生成される過程をシミュレーションして、現在の宇宙空間で天文学者たちによって観察されている化学物質の組み合わせが再現されることを示した。この研究は、生命の起源に対する私たちの理解と、合成生物学を使って研究室内で生命の起源を再現できる可能性について重要な示唆を与える。

まず、背景を少し説明しておこう。地球において、生命はおよそ40億年前、現在とはかなり違った環境で生まれたようだ。ミラーとユーリーは、そうした環境を有名な実験で再現した。

しかし、そもそも、彼らが使った化学物質の混合物は、どのようにして地球に生じたのだろうか。天文学者たちは水やアンモニアなどの単純な分子だけでなく、多環芳香族炭化水素やアミノ酸といった、もっと複雑な分子までも宇宙空間に存在する証拠を見つけている。この多様な分子群はどのように生まれたのだろうか。

大ざっぱな答えはこうだ。ビッグバンが大量の水素とヘリウムを作り出し、それが最初に生まれた星々の中の核融合反応で、炭素、酸素、窒素などのより重い元素を生んだ。そして、さらなる星形成により、地球上で見られるようなさらに重い元素群が作られた。

とはいえ、こうした元素が結合して分子を形成した過程については、まだはっきりとはわかっていない。理由の1つは、生じうる分子の種類があまりにも多いことだ。「組み合わせる(原子の)数が多くなるにつれて、生じうる分子の種類は爆発的に増えます」と、カウフマン博士らはいう。

そこで博士らは問題を単純化することにした。その方法は、生じうる分子の質量に着目するとい …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る