世界の多くの地域で、あらゆる家庭や事業所に電力を供給することは、20世紀のインフラの大きな課題だった。米国の通信事業者AT&Tは、高速インターネットを普及させる今世紀の課題を解決するために、電力網を活用する。
20日に明らかにされた新プロジェクト「AirGig」は、送電線を誘導路として使い、高速無線データ信号を長距離に送信して、電気インフラをインターネット兼用にアップグレードする。AT&Tは、入居するオフィスビル間を接続することで、このテクノロジーを試験済みで、来年の一般向け試験の実施母体を探している。
AT&Tのジョン・ドノバン最高戦略責任者は火曜日、送電線に便乗することで、通常のデータケーブルを敷設したり、電波塔や無線アンテナの基地局を設置したりするより、AirGigはずっと安価に構築できる、という。米国以外でも、非都市部のブロードバンドの安定供給を促進できる、とドノバン最高戦略責任者はいう。
米国では、非都市部の低所得者は、ブロードバンドを利用できないでいる(「米国の恥部「ネット接続料高すぎ」問題」参照)。インフラ構築のコストは、世界の人口の半数以上にブロードバンドを提供できない主な理由だ。
AirGigは、電柱に小さなプラスチック製の基地局を取り付ける。送電線から無線給電された基地局は、無線信号を送る。信号は、送電線がガードレールのような役割を果たすように調整される。AT&Tによれば、リンクごとに数億bpsでデータを送信できる。AirGigシステムは通常の携帯電話やWi-Fiアンテナでユーザーのデバイスをインターネットに接続する。
AirGigシステムは、送電線そのものではデータ信号を送らないため、送電線でブロードバンド通信を実現する従来の方法で普及の阻害要因になった、コストと信頼性の問題を避けられる。AT&Tは、自社ネットワークでAirGigを使うのはもちろん、他社にも提供するという。ケーブル型無線接続は、Wi-Fiや携帯電話用よもり高周波数帯のミリ波を用いる。
AT&Tは、ミリ波信号が、インターネットインフラのコストを削減できると主張している企業のひとつだ。検索エンジン大手のグーグルのGoogleFiberプロジェクトは、米国のブロードバンドを強化することを目指しており、いくつかの都市で光ファイバーサービスを開始しているが、AT&T同様に無線テクノロジーに集中するよう方針を転換している(「有線インターネットの終わりGoogle Fiberを無線で提供へ」参照)。また今年フェイスブックが始めた無線ブロードバンドプロジェクトもミリ波を使う。(「壮大すぎるフェイスブックのユーザー増加策」参照)。