テッド・クルーズ上院議員と、議会の他の共和党員が述べていることとは異なり、米国は外国政府にインターネットを「譲渡」しようなどとは画策していない。その代わり、米国は全世界のインターネットの維持にとって重要な複数の機能を民営化するため、国際的な計画を進めているのだ。事実、多くの米国の政府機関やインターネット政策の専門家、テック企業は、民営化反対の動きはインターネットが政府の干渉を受けないために欠かせない、という。
もしすべてが計画通りに進めば、10月1日に米国商務省の部局であるNTIA(電気通信情報局)は、インターネット管理の「監督者」としての役割から手を引く。現在の監督業務には、インターネット・トラフィックのルーティングに使われるIPアドレスなどのデータベース管理、誰が特定の「トップレベル」のインターネットドメイン(.comや.ukのような)を所有しているかの記録管理が含まれる。
NTIAはこうした業務の監督者を勤めてきたが、実際に監督権限を行使してきたわけではない。業務は非営利団体、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers、本部カリフォルニア州)が取り扱ってきた。ICANNは従来から監督業務を担う体勢があるが、ICANNのNTIAとの契約期限が迫り、状況が変化している。10月1日以降、ICANNは国際的な「多様なステークホルダーコミュニティ」(そのコミュニティの大部分はテック企業で構成される)の代理として仕事をすることになるのだ。
どうして民営化する必要があるのか? 全世界のインターネット管理から、最終的にあらゆる政府の統制を取り除くためだ。
米国はICANNによる管理業務を監督し続けてきた。というのもインターネットは元々、1960年代に国防総省の研究から発展した経緯があるからだ。1998年、商務省はICANNを創設し、そのプロセスを制度化した。しかしNTIA通信情報部門のローレンス・ストリックリング次官補は、ICANNの民営化はそれ以来最終目標であり続けてきた、と先週の上院司法小委員会の公聴会で発言した(米国と各国政府はICANNに助言し続けるだろう)。
インターネット管理プロジェクトの共同創設者兼共同理事で、ジョージア技術大学公共政策科のミルトン・ミューラー教授によれば、移行によってインターネットの管理権を外国政府に譲り渡すことになる、というクルーズ議員の主張は「真実とは真逆」である。ミューラー教授も創設に協力したICANNの目的は、インターネット管理を政府の手から切り離すことだからだ。
ミューラー教授はさらに、米国がこうした機能の民営化への賛成を良しとしないのであれば、中国やロシアといった国の、インターネット管理は国有化されるべき、または国連に委ねられるべき、という主張に説得力を与えかねない、と付け加えた。
全体主義的傾向のある国家による展望は、複数の巨大テック企業を怯えさせている。アマゾンとフェイスブック、グーグルは、連邦議会の幹部に「経済と国家安全保障」のため、計画済みの移行を進めるように促す書簡を送った。
その書簡は「インターネットの特徴はその包摂性と公開性です。こうした重要な特徴は、既定の移行計画に反映されており(略)草案に組み込まれ、遂行される準備はできています」と述べている。