最近、騒がれているマイラン製薬(日本ではファイザーが販売)のアドレナリン自己注射薬「エピペン」の価格引き上げに関する話題に、バイオハッカー「フォー・シーブズ・ビネガー」が参戦した。医療器具の自家製作に精力的に取り組んでいる団体だ。フォー・シーブズ・ビネガーが公開した手順に従えば、誰でもアドレナリン自己注射薬を安価に製作できる。
エピペンは、アナフィラキシー(死に至るおそれもあるアレルギー反応)を即座に抑える救急手段だ。ピーナツから虫刺されまで。原因となり得る要素はさまざまある。中身の薬剤アドレナリン(米語ではエピネフリン)は100年前からあるが、エピペンは誰もが簡単に注入できる点が売りだ。生死がかかっている場合は、エピペンに頼るしかなくなる。
マイラン製薬は、エピペンを製造する唯一のメーカーで、最近、エピペンの価格を57ドルから318ドルに吊り上げた。値上げ率は461%にもなる(2007年の買収時価格との比較)。値上げの経緯は奇怪で、企業の欲と議会(マイラン製薬CEOの親が米国上院議員)とサラ・ジェシカ・パーカー(以前は広告塔で、現在は契約を打ち切った)が絡んでいる。残念なことに、エピペンは高価すぎて、場合によっては使えない。使えば、必ずアナフィラキシーに対処できるのに。
複数の事情により、従来、エピペンの代替品は製造されていない。たとえばマイラン製薬が特許をがっちり固めていること、代替品を作っても確実に機能しなかったら?という懸念、規制対応がややこしく発売が極めて困難な点などがある。
マイラン製薬は、社会全体からの圧力に(わずかに)屈し、エピペンのジェネリック版を発売した。しかし、ジェネリック版のエピペンも、価格は1個150ドルもする。この価格設定に対し、業界筋が示唆したエピペンの製造コストは、わずか30ドル程度だ。
フォー・シーブズ・ビネガー(医療器具のDIYが結成目的)は、エピペンの推定製造コストが正確だったことを証明した。
フォー・シーブズ・ビネガーが公開した映像と手順をオンラインで確認すると、具体的にDIYエピペンの作り方がわかる。フォー・シーブズ・ビネガーが「エピペンシル」と呼ぶDIYエピペンは「市販されている部品だけ使い、わずか30ドル強で作れます」という。エピペンシルは、糖尿病患者向けの既存の自己注射器と一般的な皮下注射針の組み合わせだ。もちろん、わずかな手間ながら、薬剤を調達して内部に仕込む必要はある。「エピ」(エピネフリン)が入っているから、「エピペンシル」と呼ぶのだ。とはいえ、そのエピネフリン(アドレナリン)も、処方箋調剤薬局か、米国のネット薬局で入手できる。
ただし、エピペンシルのような注射器は、自作できたとしても、まったく規制に準拠していない。エピペンシルのような注射器を使って誰かのアナフィラキシーを治療するのは、必ずしもいい考えとはいえない。ただし、マイラン製薬の価格が水増しされている証拠として、エピペンシルには否定できない妥当性がある。