心筋梗塞つまり心臓発作は、心臓の筋肉への血液の供給が何らかのタイプの閉塞によって恒久的に途絶することで起こる。治療するには、血流が再開するように問題を起こしている動脈をバルーンまたはステントで広げるか、冠状動脈バイパス手術によって閉塞を迂回する必要がある。
いずれの方法でも治療は適切なタイミングで実施せねばならず、迅速な診断が大きな結果の違いを生むことがある。だが、大混乱に陥ることが多い緊急治療室では、心臓発作の兆候が見逃されることが少なくなく、深刻な結果を生んでいる。
したがって、自動化された手法により、正確かつ高い信頼性で明確な兆候を見つけられれば、大きな前進になる。しかし、数多くの研究がされてきたにもかかわらず、自動化された心臓モニタリング・システムは訓練を受けた心臓専門医より信頼性が大きく劣る。
ベルリンにあるフラウンホーファー・ハインリッヒ・ヘルツ研究所(Fraunhofer Heinrich Hertz Institute)のニルス・シュトロートホフ博士と、キールのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン大学医療センターのクラース・シュトロートホフ医師の研究のおかげで、今やその状況が変わることになりそうだ。2人が開発したニューラル・ネットワークは、心筋梗塞の兆候を見つけることにおいて、世界で初めて人間の心臓専門医の能力に匹敵するレベルになったという。
まず背景を説明しよう。心臓発作を診断する最良の方法の1つは心電計(ECG)を使って心臓の電気出力を測定することだ。標準的なECGは、患者の身体のさまざまな部位に取り付けられた12本のリード線から送られる電気信号を記録する。
これらの信号は心臓の電気的挙動をさまざまな方法で明らかにする。心臓発作に関していえば、いくつかのリード線からの信号が他の信号よりも診断の際に重要であることは、心臓専門医に昔から知られている。
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