米国政府が、自動運転車に関する初の規則を発表した。自動運転システム用の15項目から構成される「安全査定」ガイドラインは、サイバーセキュリティや衝突事故時の調査を補助するブラックボックスによる記録、路上の倫理的難題(いわゆる「トロッコ問題」)を車がどう対処するかなどを網羅している。
新政策は自律型移動手段が今後商用化するにあたって、中心的役割を果たす。現在、多くの自動車メーカーとテック企業が自動運転車を試験しており、配車サービス会社のウーバーはピッツバーグで、乗客を自律自動車に乗せて試験までしている(「ウーバーの無人タクシー実験 試乗レポート」参照)が、試験中の車両には係員が同乗しており、誤操作や難しい場面では機械に代わって運転する。
従来、自動運転車の規定は曖昧で、試験を奨励するために免除制度を設ける州がいくつかある一方で、自動運転車の規制をほのめかした州もある。連邦政府の新政策は、自動車を人間がどう制御するかに関わる法律や規則の策定は、引き続き州の責任としている。
米国運輸省が9月20日に発表した安全査定では、自動運転車のメーカーに、システムがどう設計され、どう作動するのかの説明を求めている。メーカーは、どのようにシステムを試験したか、どのような安全装置を備えているのか、どのように顧客のプライバシーを保護しているのかを申告しなくていけない。
運輸省は、自動運転車に関する安全上の懸念と、地球規模の巨大産業が目指す変革の奨励という2つの願望のバランスを取ろうとしている。
自動運転車は悪天候や複雑な交通事態など、ある意味、日常的な状況への対処を完璧にはこなせない。人間と車がどちらも運転する部分的自動システムでは、車が人間を必要とした時に人間が引き継げるように、ドライバーが継続して運転に十分な注意を払っていることをどう確証するかは、いまだに明確ではない。
今年前半、テスラ車のドライバーが亡くなった衝突事故では、高速道路向けの自動運転システム「オートパイロット」が、走行車の前にいた大型トラックの検知に失敗して発生した。米国国家道路交通安全局(NHTSA)と国家運輸安全委員会は事故を調査中で、テスラは最近、自動車に搭載する長距離レーダーシステムの精度を向上させる計画を発表した。
米国運輸省のアンソニー・フォックス長官は9月20日、新政策は既存の自動運転車にも適用されると述べた。規制を発表する電話会議でフォックス長官は、必要があればNHTSAはメーカーを行政指導し「過度に安全を脅かすような欠陥が特定された場合、運輸省はリコール権限をためらわずに行使します」と述べた。
運輸省はまた、自動運転車の安全性を高める新規制の作成も検討している。メーカーに、何らかのソフトウェアの更新により、安全上のリスクを即座に解決するよう義務づけることになるだろう。運輸省はさらに、性能と安全性の向上のため、メーカーがある種のデータを収集したり、メーカー同士で情報を共有したりすることを要求する可能性もある。
「自動運転は未成熟のテクノロジーであり、本省が適切に扱うことでさらに発展することを期待しています」とフォックス長官は政策を発表した9月20日の電話会議で述べた。
ミシガン大学の交通転換センターのジョン・マドックス所長補は、自動運転車のデザインや性能は急速に変化しており、特定の規則ではなくガイダンスを設けたのはいい方法だという。
「これからもっとたくさんのイノベーションが、特にテクノロジーを評価するかについて、起きるでしょう」