女性の生理テクノロジーにある最近の進歩は、女性用品ビジネスにはいい兆候のようで、企業の配慮が足りなければ、実際には女性の格差を助長しかねない。
今年のYコンビネータ・デモ・デイで、フレックス・カンパニーは、小さくて柔らかい円盤状のグッズ「フレックス」(ブログサイトのザリンガーの試用レポート)で、生理による出血を抑える提案をした。タンポンを、もっとスッキリとしていて、清潔な、心地よく使えるものに置き換えよう、というわけだ。
フレックスは丸めたコンドーム状で、厚めで曲げられる外縁部が円盤を固定し、水分を保持する部分に血液を溜める。円盤部は医療品グレードのプラスチック製の使い捨てで、人の体温に触れると柔らかさが増し、ひとりひとりの体のタイプに適応し、ディスクが完全に女性の大切な部分を覆って血液を漏らさない密閉状態になる。円盤部は12時間ごとに取り替えるだけでよい。
こう聞くと、ふやけると漏れやすくなるタンポンから、大幅に進歩しているかのようだ。まあ、そうともいえる。
1933年の発明以来、ほとんど変化のなかった器具にとって、フレックスは実に大きな前進だ。しかしある意味では、すでに根強い不平等が起きている公衆衛生分野の後退ともいえる。
調査によれば、米国在住の女性は、生涯で生理用品に1万8000ドルを費やす。フレックスは現在、1箱7ドルのタンポンよりずっと割高の1箱20ドルで販売中だが、米国ですら、1箱20ドルでは多くの女性には手が出せない。ましてや、発展途上国向けの入手方法や販売価格は考えられてしらいない。たとえばウガンダでは、女子学生はタンポンやナプキンが手に入らないことが理由で、授業の11%を欠席している。
しかし、たとえフレックスがこうした問題を解決しなくても、製品は現在注目されつつある「生理フェミニズム」運動(生理周期の記録用アプリや、非常に吸収性に優れた下着などがある)の一部であり、世界人口の約半数が毎月のように直面する自然の周期現象をタブー視する風潮を変えようとすることにつながる。
したがって、Yコンビネータのイベントで改良型タンポンを航空会社用の実質現実(VR)ヘッドセットや自律ドローン型警備員などと同じ場所で目にすることそのものが、テック系スタートアップとベンチャー資本(どちらも大きな男性優位産業だ)が結び付く場で、女性用品ビジネスが形作られていることになり、強力なメッセージ性を帯びている。女性の投資資本家はわずか4.2%とはいえ、フレックスは100万ドルの投資を受けている。
フレックスの使命は「すべての女性が自分の体に最適なものを選べるべきであり、弊社はより選れた選択肢でありたい」という堅い信念だ。80年の歴史があるテクノロジーを正当に進歩させることと、銀行預金を武器に、フレックスが今やるべきことは、使命にある「すべての女性」に対して、素晴らしいことをするだけだ。