KADOKAWA Technology Review
×
MITTRが選ぶ35歳未満のイノベーター「IU35 2024 Japan」発表!
11/20授賞式開催決定
デジタル経済を独占する
グーグルやフェイスブックと
私たちはどう付き合うべきか
Tim Lahan
カバーストーリー Insider Online限定
Let’s make private data into a public good

デジタル経済を独占する
グーグルやフェイスブックと
私たちはどう付き合うべきか

市場を独占し、利益を欲しいままにするインターネット巨大企業のビジネスは、税金で作られたテクノロジーを用い、ユーザーから得た個人情報を売りさばくことで成り立っている。こうした企業の価値がどのように生み出され、どのように測られてきたのか、そこから誰が利益を得るのかを、私たちは知る必要がある。 by Mariana Mazzucato2018.07.07

内燃機関が100年以上にわたって主要な動力源として使われてきたのは、それが最良のエンジンだったからではない。歴史的偶然によって他のものより先に有利な立場を得たからだ。キーボードのQWERTY配列は、タイプライターの機械式アームがぶつかって絡まるトラブルを減らすために、わざと非効率的に設計された。この特性はもはや現在のキーボードには無関係だが、人々はそんなことにはお構いなく、まだQWERTY配列のキーボードを使っている。なぜなら皆がそれに慣れているからだ。

グーグルやフェイスブック、アマゾンが巨大企業でいられる背景にも同じ原則がある。人々がこれらの企業のサービスを使うのは慣れているからだ。グーグルは単なる検索エンジンではない。電子メール(Gメール)でもあるし、ビデオ通話ツール(グーグル・ハングアウト)でもあるし、書類の作成・編集ツール(グーグル・ドキュメント)でもある。これらのサービスは全て、グーグルに忠実であれば利点を最大限に高められるように作られている。Gメール・アドレスを持っていなければグーグル・ハングアウトは使えないといった具合だ。

なぜこれが問題になるのだろうか? こうした巨大企業が、税金で作られたテクノロジーを元に巨額の利益を得ていることがその理由かもしれない。グーグルのアルゴリズムは米国国立科学財団の助成金を使って開発されたものだ。インターネットは国防高等研究計画局(DARPA)の資金を使って作られた。同じことが、タッチスクリーンのディスプレイ、GPS、Siri(シリ)にも当てはまる。巨大テック企業はこうして市場を事実上独占するようになったのだ。他のあらゆる産業では独占を防ぐための規制があるのに、テック企業は同じような規制をうまくかわしている。しかも、彼らのビジネス・モデルは、人々の生活習慣や個人情報を利用することの上に成り立っている。そもそも、彼らの使っているテクノロジーの開発資金を提供したのは納税者だというのに。

擁護派の人々は、こうしたインターネット分野の巨大企業を「世の中のためになる力」として表現することを好む。そして、デジタル・プラットフォーム上でソーシャル・ネットワーク、GPSナビゲーション、健康管理といったあらゆるものをタダで使えるシェアリング・エコノミーを讃える。

しかし、グーグルがくれるものはどれもタダではない。むしろまったく反対だ。人々は、グーグルがまさに欲しがるものを渡しているのだ。グーグルのサービスを使う時には、無償で何かを得ているような気がするかもしれない。だが、あなたはグーグルのお客ですらない。グーグルの販売する商品だ。グーグルが得ている利益の多くは、広告スペースとユーザーのデータを企業に売ることで生まれている。フェイスブックとグーグルのビジネス・モデルは、パーソナル・データを商品化する上に成り立っている。つまり、人々の友情、関心、心情、好みを売り物に変えているのだ。

シェアリング・エコノミーと呼ばれる代物も、同じ発想に基づいている。顧客は旅行代理店などの機関とやり取りをする代わりに、個人間でやり取りをする。この際に企業の果たす役割は、サービスを提供することではなく、売り手(たとえば、車を持っていて、それを運転する気がある人)と買い手(車に乗せてもらう必要がある人)をつなぐことだ。こうしたいわゆる「プラットフォーム」は、物やサービスの生産、共有 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
  4. This AI system makes human tutors better at teaching children math 生成AIで個別指導の質向上、教育格差に挑むスタンフォード新ツール
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る