人工知能(AI)分野のリーダーという立場を中国に奪われた米国は、量子テクノロジー分野では世界トップの地位を守ろうと決意している。
米国議会では、量子テクノロジーに関わる2つの法案が個別に提出されようとしている。2つの法案は、量子科学研究への連邦政府予算をこれまで以上に増やし、この分野での官民協力をいっそう奨励するかもしれない。とりわけ重点が置かれているのは、量子コンピューティングだ。この分野が発展することで、現在最高の性能を持つスーパーコンピューターがそろばん程度に霞んで見えてしまうほどのマシンを将来的に作り出せる可能性がある。
データをビット(0または1)で処理する従来のマシンとは違い、量子コンピューターは0と1の両方の値を同時に表せる量子ビット(キュービット)を利用する。従来型のコンピューターの場合、扱える情報量が数ビット増えても演算能力に大きな差は生まれないが、量子コンピューターの場合、扱える情報量が数キュービット増えれば、マシンの演算能力は指数関数的に高まる。
この複雑なテクノロジーはまだ萌芽期にあるものの、急速に発展している(「量子コンピューターはなぜ必要なのか?」参照)。量子テクノロジーは将来、研究者が新たな材料を開発したり、医薬品として使える新しい分子を作り出したり、石油の探索などに使える超強力なセンサーを作ったりするのに役立つかもしれない。量子テクノロジーは国家安全保障にも大きく影響する。量子コンピューターを利用することで、現在使われている最先端の暗号さえも破れるかもしれないのだ。実質的に侵入不可能な、新しい通信ネットワークの構築もできるだろう。
背後に迫る中国
他の国や地域では、発表されている量子関連の野心的な研究や事業の計画にすでに資金を提供している。欧州連合(EU)は約12億ドルを出資して複数年にわたる計画を始動している。中 …