世界最大の炭素取引市場開設をぶち上げた中国の「本気度」
中国が気候・エネルギー問題で主導権を握ろうと、世界最大規模の炭素取引市場の開設を進めている。だが、12月に発表された初期の計画からは大きく後退し、対象は当初、電力部門のみとなっている。中国の狙いはどこにあるのか。 by James Temple2018.07.04
世界最大の共産主義国であり、世界最大の大気汚染国である中国は、炭素排出量の削減に向けて、自由市場の導入に近づこうとしている。2017年末、数年間にわたる地方でのパイロット・プロジェクトに続いて、中国政府は満を持して全国的なキャップ・アンド・トレード計画を発表した。
欧州連合(EU)の約2倍の規模になる世界最大の炭素市場の創成を、クリーン・エネルギーの支持者は声高らかに吹聴した。
だがこれまでの動きを見たところ、経済成長を脅かす恐れがあるとして、中国は非常に慎重に取り掛かっているようだ。実質的な排出量削減は、今から10年後に繰り延べられる可能性が高い。
中国の炭素排出量削減計画が最終的に成功するか失敗に終わるかは、非常に重要だ。直近のある分析によれば、中国の二酸化炭素排出量は世界全体の排出量の4分の1以上にあたり、そのレベルはこれまでにないほどの速さで上昇しているからだ。中国がすぐに急激な削減を開始しない限り、気候問題に関する世界的な目標を達成するのはほぼ不可能だろう。さらに、他の国が同様の市場ベースの炭素汚染削減方法をどのように取り入れるか、中国の取り組みが影響を与えるかもしれない。
「多くの国際的な事柄が、中国の計画に関連しています」とスタンフォード大学の経済学者であるローレンス・ゴルダー教授とその共著者が2018年初めの論文に書いている。「失敗すれば、世界中の多くの地域において、排出量取引計画の採用が妨げられるかもしれません」。
のんびりとした出足
排出削減のための最も効果的な方法として、多くの経済学者がしつこく推奨しているのがキャップ・アンド・トレード計画である。
キャップ・アンド・トレード計画とは、企業に割り当てられた限りある温室効果ガス排出量を譲渡、または売却する機会を政府機関が提供する(これがキャップ)。許可されている割当排出量を下回る企業は余分な割当量を売却でき、許可された排出量を超えてしまう企業は他の企業の余分な割当量を購入しなければならない(これがトレード)。
この仕組みは、本質的には炭素排出量に値段をつけ、企業の汚染削減努力に金銭的な動機を与えるものだ。理論としては効果的に思えるが、カリフォルニア州やヨーロッパをはじめとする数少ない地域でしか実施されておらず、これまでどの地域のキャップ・アンド・トレードもわずかな結果しか出していない。
中国が昨年12月に発表した計画では、国家報告システムの構築に1年、「模擬的な」取 …
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