我が道を行くテスラと
本気で対抗するGMの勝敗
テスラ対抗の新モデル「シボレー ボルト」の発表に続いて、GMは再生可能エネルギーへの転換を加速させると宣言。企業の方針までテスラに似せてきた。 by Michael Reilly2016.09.19
ゼネラルモーターズ(GM)はテスラの数字にこだわっている。第一弾として、テスラを狙い撃ちし、今年後半に発売予定のシボレー・ボルトはフル充電で約383kmの航続距離はあると発表。テスラのイーロン・マスクCEOがフル充電で約346km走ると発表した同価格帯のテスラ モデル3を大きく引き離した。
この発表でマスクCEOやテスラを傷つけたのだとすれば、16日の発表で、GMは傷口にさらに塩を少しすり込んだ。GMは、2050年までに会社を100%再生可能エネルギーで操業すると宣言したのだ。巨大なエネルギーを消費する製造施設のある会社としては、大胆な主張だ。
ん?ちょっと待て。未来のクリーン・エネルギー企業だといつも派手に宣伝しているのではテスラではなかったか。車を作るだけで終わりではなく、送電網規模の電池を開発し、さらに巨大な太陽光発電工場を買うといっていた。
しかし、GMがボルトの戦勝記念に、認可前のテスラのモデル3工場(カリフォルニア州フリーモント)からテスラがネバダ州で建設中のギガファクトリーまでドライブしたいなら、計画は延期した方がいい(約420km離れていて、フル充電でもたどり着けないからではない)。
ブルームバーグが指摘しているとおり、この競争は始まったばかりなのだ。少なくとも明白な理由がひとつある。ボルトは基本的にはハッチバックの実用車なのに定価は3万7500ドル。テスラ モデル3の販売価格は3万5000ドルになりそうで、高価で豪華な上位車種モデルSのスタイルを受け継いでいる。
そうなると、両社が直面しているのは、テスラは約40万台の受注済みモデル3を妥当な期間で製造できるかであり、GMは誰がボルトを買うのか、というほぼ逆の話になるのだ。先週はGMが辛うじて「手頃」と呼べる長距離走行可能な電気自動車というパンチを繰り出し、テスラより優れていると肯定的な記事が大半となり「優勢」と判定された。しかしボルトは注文されるだろうか。
GMは、ここ数日間、テスラに数発のパンチを食らわせて喜んでいるかもしれない。しかしGMがボルトを引っさげて登場した事実、さらにフォルクスワーゲンやBMWといった巨大自動車メーカーもこぞって電気自動車の競争に参入したことは、マスクCEOが始めた自動車をどのエネルギーで走らせるか、という転換の第一歩を実証することになるのだ。マスクCEOが最初に大衆向け電気自動車を市場展開したのではない(正直言って、太陽光発電システムのリース会社ソーラーシティの買収で何が起きるか、誰もわかっていないだろう)。だが、それでテスラが負けることにはならない。
(関連記事:New York Times, Bloomberg, “The Chevrolet Bolt Has Totally Trumped Tesla’s Model 3,”“Tesla-Solar City Success Dependson Battery Technology That Doesn’t Yet Exist”)
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- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。