アマゾンの自動倉庫には人間が必要——主任技術者が語る
アマゾンの高度に自動化されたフルフィルメント・センターは、決して人間の雇用を減らすためものではないし、小規模の事業者向けのサービスも提供している、と同社の主任技術者はMITテクノロジーレビュー主催の「EmTech(エムテック)ネクスト」で主張した。 by Erin Winick2018.06.07
アマゾンの自動倉庫で働くロボット部隊は、今や10万台を超える。人間と一緒に仕事をし、電子商取引大手の膨大なフルフィルメント(受注から発送までの作業)の要求に応えるべく役立っている。
アマゾンのロボットは、広大な倉庫の中を在庫を抱えて動き回り、顧客の注文した商品を集め、人間が商品に関わる手間を減らしている。しかし、アマゾン・ロボティクスの主任技術者であるタイ・ブレイディは、次のように主張する。これらのロボットは、倉庫内で人間がする仕事を減らすためではなく、人間の能率性を高めるために導入されているのだと。
実際、アマゾンは雇用を全力で推し進めており、現在50万人以上を雇っている。ブレイディ主任技術者は、雇用を増やすためにはロボットが不可欠だと考えている。「何万もの注文が同時に発生すると、人間が対応できる範囲を超えてしまいます」。6月4日に開催されたMITテクノロジーレビュー主催のカンファレンス「EmTech(エムテック)ネクスト」で、聴衆にそう語った。
人間はまだ、フルフィルメント業務に必要なスキルを提供している。器用さや順応性、そして昔ながらの常識といったものだ。たとえば、フルフィルメントの業務中にポップコーンのバターが誤って容器からこぼれ落ちたとき、バターはつぶれて、フロアの真ん中に巨大なバター溜まりを作った。好奇心旺盛なロボットは、この状況に対処する術も知らないのに、様子を見に行きたがった。「ロボットはバター溜まりの中を通り抜けて行ったのですが、スリップしてエンコーダーにエラーが出てしまいました」(ブレイディ主任技術者)。
アマゾンは労働者を解雇しなかったとは言え、自動化された高効率のフルフィルメント業務は小売業の雇用を大幅に減少させる一因となっている。そして雇用減少の影響は女性に偏っている。アマゾンのレジのない店もまた、小売業の雇用を再編する可能性を有している。
しかしアマゾンは、小規模な事業者がアマゾンのプラットフォームを利用できるサービスを提供し、ネガティブな影響を軽減させようと取り組んでいる。「当社にはフルフィルメント・バイ・アマゾンというサービスがあります。アマゾンの在庫の半分以上は、サードパーティの業者が販売している商品です。家族経営の小さな販売店は世界中に存在しています。フルフィルメント・バイ・アマゾンは、世界中の小さな店々に大成功をもたらすでしょう」とブレイディ主任技術者は語った。
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- エリン・ウィニック [Erin Winick]米国版 准編集者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。機械工学のバックグラウンドがあり、宇宙探査を実現するテクノロジー、特に宇宙基盤の製造技術に関心があります。宇宙への新しい入り口となる米国版ニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」も発行しています。以前はMITテクノロジーレビューで「仕事の未来(The Future of Work)」を担当する准編集者でした。それ以前はフリーランスのサイエンス・ライターとして働き、3Dプリント企業であるSci Chicを起業しました。英エコノミスト誌でのインターン経験もあります。