オーストラリアのクイーンズランド州北部で、大地に開いた2つの巨大な穴を活用する試みが始まっている。かつてキッズトン金鉱山の2本の坑道だった場所が、まもなく膨大な量のエネルギーを貯蔵する施設に生まれ変わるのだ。
水力発電所が目新しくないのは当然だが、ここはちょっと変わっている。水が一方の坑道から山を下ってもう一方の坑道に流れ込むことで、電気を起こすのだ。電力需要が少ないとき、水を山の上にポンプで押し上げて、後で使えるように貯蔵する。「揚水発電所」方式は世界中にあるが、キッズトン発電所は、同じ水を何度も繰り返し使う点で独特だ(ただし、補充が必要なときは近くのダムから取水する許可がある)。
ジェネックス(この計画を支援企業)は、300メガワットの電力を7時間連続で発電するのに十分な水量があると計算している。汲み上げに使う電気は送電網から受電するか、近くに建設中の50メガワットの太陽光発電所から受け入れる。
キッズトン発電所のより大きな狙いは、風力や太陽光発電所のエネルギーを貯蔵して、風が吹いていないときや日が照っていないとき、送電網へのエネルギー供給を平準化するための事例研究になることだ。
大量の再生可能エネルギーをどう貯蔵するかの問題は、再生可能エネルギーの悩みの種で、化石燃料を代替する可能性の制約になっている。この問題が未解決のままなので、単に巨大な電池を作ることから地下の洞窟に空気を押し込んだり岩を満載した列車を山の上に押し上げたりまで、多岐にわたる解決法が提案されてきた。
だが揚水発電は、ずっと成熟したテクノロジーであり、世界の大規模エネルギー貯蔵施設の99%を占めているとガーディアン紙は書いている。揚水発電は通常、近くの川から無尽蔵の水が供給される、大自然の恩恵にあずかっている。だがもしキッズトン発電所が計画通り働けば、再生可能エネルギーを貯蔵する新たな頼もしい方法になるかもしれない。