記録的な大干ばつが終息しつつあった2018年3月上旬、シーズン末期の嵐がカリフォルニア州をついに潤した。花崗岩でできたシエラネバダ山脈に数十センチの雪が積もり、天然の貯水池が戻ったのだ。
嵐が収まった日曜日の朝、2人の米国航空宇宙局(NASA)の研究者が、マンモス・ヨセミテ空港から小さな飛行機に乗り込んだ。この空港のたった1つの滑走路は、モリソン山のピラミッド型の頂上に向かって伸びている。
最後の安全点検を終え、パイロットは今シーズン最初のASO(Airborne Snow Observatory:空中からの積雪観測)のために飛行機を離陸させた。飛行機は双発ターボプロップ・エンジンのビーチクラフト・キングエア90。2つのセンサーを装備し、計測のために床の一部がガラス張りになっている。ライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)が山の積雪量を計測し、分光計で反射光を測定する。この2つの数値を合わせれば、春にどれだけの雪が溶け出し、どれくらいの量の水がカリフォルニア州のダムや貯水池、用水路へ流れるのか、きわめて正確に予測できる。
カリフォルニア州の水資源は水力発電や生活用水に使われるだけではなく、米国最大の農産地も潤さなくてはならない。このデータを使えば、水源機関は水資源を慎重に管理できるのだ。気候変動によって季節変動の度合いが悪化しているため、カリフォルニア州は交互に発生する長期の干ばつと大規模な洪水に悩まされ、水資源管理はますます重要性を増している。
「水資源を管理するには計測が必要です」と、NASAのジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)が運営するASOプログラムの主任研究員、トーマス・ペインター博士はいう。
急激な気候変動
カリフォルニア州東南部に走るシエラネバダ山脈は、全長約650キロメートルにおよぶ。シエラネバダ山脈の雪解け水は毎年、カリフォルニア州の水源の3分の1を担う。
水資源管理は、難しい仕事だ。貯水池管理者は、洪水を回避し、魚などの生態系を守り、地下水を溜め、都市や産業に水を供給した上で、放水しなければならない。一方で、夏の乾期の数カ月間、農家や企業、住民の需要に見合う水も蓄えておかなければならない。
壊滅的な干ばつがカリフォルニア州を襲った2013年春から、ASOプログラムは積雪の観測を開始した。この歴史的大干ばつによって、節水命令が出され、1億本以上の樹木が枯れ、山火事が頻発し、カリフォルニア州の巨大な農業収益が大打撃を受ける事態となった。その後、2016年の冬から2017年にかけて、いくつもの嵐が山脈の一部に2400ミリメートルもの雨を降らせ(カリフォルニア州で史上2番目に多い降水量)、大干ばつは終息した。
ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)4月号によると、温度上昇や大気水蒸気の増加などの気候変動のために、このような「急激な気候変動」がカリフォルニア州で起きる可能性がこれまでの2倍になるという。また、今世紀半ばまでに、200年に一度の洪水が40年ごとに起こる可能性も指摘している。
全体の降水量は、雨の極端に多い年と極端に少ない年とを平均すれば大きく変わらないかもしれない。しかし「最終的に終息するわけではありません」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の気候科学者で、論文の主筆を務めたダニエル・スウェイン博士はいう。「降水量の多い年と干ばつの年、それぞれで被害が発生します。水に …