KADOKAWA Technology Review
×
行き過ぎた太陽光発電、カリフォルニア州の憂鬱
David Goehring | FLickr
ニュース Insider Online限定
California is throttling back record levels of solar—and that’s bad news for climate goals

行き過ぎた太陽光発電、カリフォルニア州の憂鬱

太陽光発電を推進してきたカリフォルニア州で電力の過剰供給が問題になっている。過剰供給は電力卸価格の下落、コストの上昇、不安定な電力供給につながり、蓄電設備や送電網の見直しにかかるコストも決して安くない。 by James Temple2018.06.14

カリフォルニア州の住民は晴天に恵まれた春を楽しんでいる。その結果、太陽光発電所と建物の屋根に設置された太陽光パネルが、電力網に電力を過剰供給している。

問題は発電量が多すぎて電力価格の急落を招き、カリフォルニア州の送電網運用機関が再生可能エネルギー発電所に発電抑制を要求していることだ。4月、カリフォルニア州の太陽光発電所と風力発電所は、運転停止または運転抑制でおよそ9万5000メガワット時の電力量を抑制した。これは3000万世帯以上の1時間の消費電力をまかなうのに十分な電力量で、同州の電力抑制量としては過去最高だ。

太陽光発電による過剰供給が発生しているのは、近年、カリフォルニア州が膨大な量の再生可能エネルギー発電力を得たからだ。カリフォルニア州は2030年までに二酸化炭素を排出しない電力源で全電力の半分をまかなうという政策目標を掲げており、その達成に向けた努力の結果だといえる。今後数年、送電網への電力供給がさらに増加し、このままのペースでいくと、予定より10年早く目標を達成することになる。

カリフォルニア州は最近、新築住宅に対して屋上太陽光パネル設置を義務付ける新しい規制を導入した。この新規則が問題をさらに悪化させるだろう。電力需要が減少しても、太陽光電力供給は増加するからだ(「高すぎるコスト、カリフォルニア州の太陽光パネル義務付けに疑問」参照)。

クリーン・エネルギーの増加は歓迎すべきはず

気候の先行きや二酸化炭素排出量削減の点では、間違いなく素晴らしいニュースだ。しかし、その成功は電力システムに、経済的・物理的負担をかけるという現実的な大きな課題も生み出している。

経済的・物理的な制約が、電力セクターを見直すための広範囲な取り組みを台無しにし、再生可能エネルギーのさらなる導入に水を差すことになり得る。実際、その影響はすでに出ており、カリフォルニア州では新しい太陽光プロジェクトによる発電の供給経路が詰まっている原因になっている。

再生可能エネルギーによる発電を強化する上で、多くの国や地域が同様の成 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る