KADOKAWA Technology Review
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Light Pollution Atlas Shows Why 80 Percent of North Americans Can’t See the Milky Way

先進国の6割以上の人は
天の川が見えない

全人類の3分の1以上は光害のせいで星空が見えず、LED照明のせいで状況はさらに悪化する。 by Emerging Technology from the arXiv2016.09.14

ノースリッジ地震でロサンゼルス地区に大停電が発生した1994年、奇妙なことが起きた。空にこの世のものとは思えないほどの変わった光を見たと多くの人が911(日本の110/119に相当)に通報したのだ。

人々が実際に見たのは天の川だ。「天使の街(the City of Angeles)」のはずのロサンゼルスでは光害があまりにひどく、銀河を見たことがなかったのだ。

さて、この話は興味深い疑問を投げかける。地震発生以降で光害はどれくらい悪化したのだろうか。今後どう変化するのだろうか。

イタリアのティエネにある光害科学技術研究所のファビオ・ファルキ研究員と、かつてないほど詳しく全世界にわたって光害を測定してきた数人の同僚のおかげで、13日、私たちはひとつの答えを得た。

報告によると、産業革命中に大気を満たし始めた発光霧は、これまでにないほど厚くなり、ヨーロッパと北米のほとんどの人は、夜空をはっきりと見られない、という。

研究では、米国海洋大気庁が運用する気象衛星のスオミNPPを利用した。スオミNPPは極軌道衛星で、24時間に1度極から極へ地球の周りを回るので、地球を真下に見ながら回転する地球のあらゆる場所を撮影できる。

スオミNPPは、雲の量や表面の人工的な明かりを考慮に入れ、時間をかけて画像を合成できる。2014年に6カ月にわたって新データが集められ、ファルキ研究員と同僚によって、データが処理され、新世代の光害マップが作成された。

研究結果の出来栄えは素晴らしい。研究チームは、光害問題がどれほど悪化したのかを暴露する地球全体の光害地図を作成した。「世界人口の約83%、米国とヨーロッパの人口の99%以上は光害に汚染された空の下に住んでいるとわかりました」とファルキ研究員はいう。

問題の深刻度を測る方法のひとつは、天の川が見えるか、だ。問題は深刻で「光害のせいで、天の川は、ヨーロッパ人の60%と北米人の約80%を含む、3分の1以上の人類に見えていません」と研究チームはいう。

しかし、世界中が光であふれているわけではない。研究チームは、光害の影響を最も受けていないのは、チャド(アフリカ中央部)、中央アフリカ共和国、マダガスカルで、住民の4分の3以上は、汚されていない空の下で暮らしているという。

他の国々もそれほど幸福ではない。最も汚染がひどいのはシンガポールで、全国民があまりに明るい空の下で生活しているため、シンガポール国民の目は完全には暗順応(明るい場所から暗い場所に移ったとき、光量を調整する機能のこと)できなくなっている。シンガポールの夜は、日の入り直後より暗くなることはない。

問題は、多くの国で高圧ナトリウム照明から、エネルギー効率の高い白色LEDへの移行が進んでいることだ。LEDは人間の目に見える光よりさらに広い波長まで光を出すので問題は今後さらに悪化する。研究チームは、LEDは、2.5倍も多く光害を起こすという。

なお、研究には欠けていることがある。スオミ衛星のセンサーは、スペクトルの青い部分の光を検知できないため、光害を測定できなかったのだ。

望みもある。世界各地で、夜空がこれ以上台無しになることを防ぐため、光害の規制が始まっているのだ。たとえば、イタリアのほぼ全域(イタリア最大の都市ミラノを含むロンバルディア州等)、スロベニア、チリの2つの地域、カナリア諸島の一部など、各地で制定が始まっている。

法律は、天文学者に非常に重要だが、他にも影響がある。特に、夜空を見ることには、地球の位置を理解するような文化的意義がある。

研究チームは、2つの未来のシナリオを仮定する。

「今後光害が管理されるようになり、今の人類は光に汚染された世界を経験する、最後の世代になるかもしれません。あるいは、世界は明るくなり続け、アイザック・アシモフの短編『夜来たる』のように、ほとんどすべての人類が星を見る経験をしなくなるかもしれません」

人々が汚されていない夜空に驚き警察に通報する可能性は、すでに起きた悲しい現実だ。光害が管理されるほうに期待しよう。他のことはともかく、夜空の美しさが高まるのだから。

参照:arxiv.org/abs/1609.01041:人工的な夜空の明るさの新世界地図

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