KADOKAWA Technology Review
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AI’s Very Disruptive Time

人工知能で勝つ方法、教えます

ツイッターのAI研究のリーダーであり、ハーバード大学で学術研究にも従事したライアン・アダムスは、さらに多くの産業が機械学習を利用するようになると見ている。だが、業界をリードするのは、より多くのデータと計算能力のある企業だ。 by Nanette Byrnes2016.03.29

アダムス教授は、機が熟したと理解している。2011年からハーバード大学でコンピューター科学を教え、機械学習ポッドキャスト「トーキング・マシーンズ」を共同主催してきたアダムス教授は、昨夏、ツイッターが創業15カ月目の機械学習系スタートアップ企業ウェットラボを買収したとき、同社の知能アルゴリズム研究チームを率いていた。

ウェットラボのテクノロジーを利用すると、画像による物体認識や音声処理といった大規模機械学習システムの最難関部分を一部自動化できる。

Ryan Adams
ライアン・アダムス

ハーバード大学の研究者は、バイオメディカルロボットから化学分野の課題まで幅広いプロジェクトでこのツールを使用し始めた。初期のオープンソース版は、ネットフリックスによって、深層学習の実験に採用された。

アダムス教授がハーバード大学を去るにあたり、MIT Technology Reviewビジネスレポートの編集デスク、ナネット・バーンズとツイッター社内(マサチューセッツ州ケンブリッジ)で会い、機械学習に対する爆発的な関心について語った。

人工知能は学術的興味の対象から商業用ツールに移行しました。この動きを推し進めている要素は何でしょうか。新しいアルゴリズムの発明、コンピューターの高速化、大容量データの電子化でしょうか。

何と言っても、AIへの投資が大勢を変えたと思います。テック企業が現時点で何十億ドルもの資金を投入したおかげで、変化が加速したのです。

ツイッターが御社を買収したのもその一例です。機械学習を取り入れると、ツイッターはどう改善されるのでしょうか。何か例を挙げてもらえますか。

非常に大きな機会が訪れます。たとえば、ツイッターのコンテンツを整理する方法、ユーザーが現在進行中の新しい出来事を効率よく把握したり、新しく関わるコミュニティを発見しやすくなったり、ツイッターの使用感の向上に活用できたりします。想像しやすそうな課題をひとつ挙げると、大勢の人が興味を感じ、リンクを張った情報を組み合わせ、そのコンテンツをツイッター上のコンテンツと関連づけて理解を促すような用途があります。

深層学習のようなAIの手法は、どの程度解明されているのでしょうか。

現在、深層学習は極めて実験が盛んな分野です。明らかに何か重要な技術発展が進行中です。深層学習システムがすばらしい成果を次々と出しており、解明された内容はごく一部ですが、その効果は絶大です。

AIの定義は簡単には決まらず、人工知能の適切なテストですら、いろいろな議論を招いていますね。

「コードやアイデアを公開するとき、手塩にかけて立派にした農場を手放すような気持ちにならないのかということですが、グーグルやツイッターのようなコンピューティングパワーを持たない企業なら、データも持っていません」

定義を難しくしている要素には、人間を基準に知能の概念を捉えているからです。我々は知能がこの世界のものではないかのように「人工」知能という言葉を使いますが、飛行機のことを「人工鳥」と言ったり、飛行機が「人工飛行」するとはいいません。ただ「飛行」するといいますね。

知能に対する見方は非常に人間中心的で、人間以外の知能を作ったので、人工的と呼ぶのです。だから、人間を基準にせずに、知能を定義するのは非常に困難で、私自身、思いつきません。

もし過去にさかのぼって、50年か60年ほど前、初期のAI研究者に「常に便利な道具として携帯します。非常に幅広いトピックにわたってあらゆる疑問に答えられます。人がしゃべったことを理解し、世界中のあらゆる場所の光景を映し出します。ある場所から目的地まで、どう行けるかを教えてくれます」と言ったとしましょう。スマホがグーグルや各種マップ機能、Siriで実現した機能について、実物ではなく言葉でこう説明したら、その研究者は「それこそAIです」と答えるでしょう。つまり、人が道具に求めることは、時代と共に大きく様変わりするものなのです。

これまで、企業はAIの研究情報をかなりオープンにしてきました。オープンソースソフトを公開し、スタッフの論文発表や会議での発表を許すといった具合です。このようなオープンな状態はどのくらい続くでしょうか。

コードの公開は、コミュニティに努力を還元する点、機械学習分野で卓抜した人材を採用できる点、企業を超えたコミュニティがツールに加えた改良点を企業が利用可能といった点から見て、よいことです。

これらの企業は、コードやアイデアを公開するとき、手塩にかけて立派にした農場を手放すような気持ちにならないのかということですが、グーグルやツイッターのようなコンピューティングパワーを持たない企業なら、データも持っていません。アイデアはあるかもしれないし、コードも書けるでしょう。でも、データがなければ、事業につなげる馬力がなければ、アイデアやコードだけではどうにもならないのです。

今後、AIはどのような形態をとるでしょうか。

AIは、突然賢いロボットが出てくるといった形では実現しないでしょう。むしろAIはツールにとどまり、ただ常に改良され続けると考えています。

ひとつ心配なのは、実物(現実)と非常に見分けの付きにくいを生み出すメディアを人工的に作り出す(機械学習とAIの)機能が今にも開発されてしまうように思えることです。真実を扱うように映像などへの依存度を高めている社会に浸透すると、実に危険なツールです。

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クレジット Photo courtesy of Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences
ナネット バーンズ [Nanette Byrnes]米国版 ビジネス担当上級編集者
ビジネス担当上級編集者として、テクノロジーが産業に与えるインパクトや私たちの働き方に関する記事作りを目指しています。イノベーションがどう育まれ、投資されるか、人々がテクノロジーとどう関わるか、社会的にどんな影響を与えるのか、といった領域にも関心があります。取材と記事の執筆に加えて、有能な部下やフリーライターが書いた記事や、気付きを得られて深く、重要なテーマを扱うデータ重視のコンテンツも編集します。MIT Technology Reviewへの参画し、エマージングテクノロジーの世界に飛び込む以前は、記者編集者としてビジネスウィーク誌やロイター通信、スマートマネーに所属して、役員会議室のもめ事から金融市場の崩壊まで取材していました。よい取材ネタは大歓迎です。nanette.byrnes@technologyreview.comまで知らせてください。
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