スコットランド、
世界初の潮力発電所を始動へ
ペントランド海峡の激しい海流は、潮力発電を実用化できる、世界でも数少ない場所のひとつだ。 by Jamie Condliffe2016.09.14
スコットランドのハイランド地方の岩だらけの海岸の沖(イギリス本島と雄大なオークニー諸島の間)の海は、激しい潮の流れで知られている。現在、スコットランドは潮流を利用し、一帯を世界初の大規模潮力エネルギー・ファームの本拠地にしようとしている。
最終的に269台が設置される発電機のうちの最初の1台が現在、設置予定地のペントランド海峡に搬送中とガーディアン紙が伝えた。巨大な発電機は機械工学の産物で、それぞれ高さは15m、重さは200トンあり、8mの羽が付いている。最初に設置される発電機は4台で、2020年代前半までに残りは徐々に追加され、ちょうど風力発電所の水中版のような設備として構築される。
この場所が「メイゲン潮力プロジェクト」に選定されたのは、毎秒最大5mという強い潮の流れがあるからだ。潮流によって、発電機は1台あたり1.5メガワットを発電し、施設が完成すれば、発電量は合計398メガワット(17万5000世帯に供給可能な電力) になる。
スコットランドは再生可能エネルギーに前向きだ(上図参照)。2015年末の時点で、スコットランドは7.8ギガワット(スコットランドの全消費量の57.4%分)もの電力を再生可能エネルギー系の発電所から生み出したと発表した。さらに2020年までに、電力の年間消費量の100%を再生可能エネルギーにすることを目標にしている。
しかし、激しい潮の流れがあっても、2016年第1四半期にスコットランドの発電所の総発電量のうち、波力・潮力発電は8メガワット分しかない(陸上の風力発電の5520メガワット)。断定するわけではないが、プロジェクトは実行段階にあることが大事なのだ。潮力エネルギーは、インフラの構築費がとても高いため、とにかく実現しにくいのだ。
潮力発電が風力発電に追いつくことは当分なさそうだ。ペントランド海峡の東まで、かつて油田で栄えた北海は、洋上風力エネルギーで2度目のエネルギーブームが起きている。特に、ドッガーバンク(イギリス本島の東側に広がる広大な砂堆)プロジェクトは、約932平方kmに、400台の風力発電機を設置し、1.2ギガワット(メイゲン・プロジェクトの3倍)を発電することになっている他、別の設備も計画中だ。
したがって、潮力発電は、スコットランドの先進的エネルギー計画を支えることにはならない。しかし、海底の発電機が増えれば、スコットランドは文字通り自国の周りにあるエネルギー源を(油田のように輸出するのではなく)初めて、自国のために使うことになるのだ。
(関連記事:The Guardian, “Why Hasn’t Tidal Power Taken Off?” “Wind Fuels the North Sea’s Next Energy Boom”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。