ドローンでブリトー配達実験
グーグルさん、本気ですか?
ドローンで貨物を運べるようになれば、配送網は効率化されるだろう。だが実証実験の多くは、ありがちなアイデアに頼る傾向がある。 by Jamie Condliffe2016.09.13
ドローンが自宅に商品を運んでくるのはずっと先の未来ではない。しかし、ドローンが広範囲の分野で普及するにはいくつかの欠点があり、解決までの間、基礎技術を開発する企業は、中途半端な手法でドローンの価値を訴求せざるを得ないようだ。
アルファベット(グーグル)は、チポトレ(欧米でチェーン展開するメキシコ料理レストラン)と提携し、社内プロジェクト「プロジェクト・ウィング」のドローンを使って、バージニア工科大学のキャンパス内でブリトーを配達すると発表した。バージニア工科大学は、米国連邦航空局(FAA)に認可されたドローンの試験飛行場のうちのひとつであり、場所としては悪くない。だが、ブリトーを運ぶ、というアイデアはいただけない。実験のコンセプトを決める会議で「学生はブリトーが好き。だったら学生にブリトーを配達しよう!」と、安直な会話があったのだろうと想像できてしまう。
間違いなく、「学生にブリトー」はマーケティング戦略だ。だが、意味がないにもほどがある。ブリトーをひとつ配達しても空腹を満たす学生は一人しかない。学生寮に続々とドローンを編隊で飛ばし、空腹の学生にブリトーを与えてどうするつもりなのか(タコスキャノンの方がマシだし、開発が遅れているなら、食糧用のハイパーループでもいい)。
悲しいことに、学生にブリトーを配達する以外にも、ありがちなアイデアに基づく配達サービスの試験がある。ロンドンでは、スタートアップ企業のスターシップテクノロジーズのロボットが、外食サービスのジャストイートとプロントの出前サービス実験に採用されており、テイクアウト客の自宅までドローンが商品を届ける。なんと最高速度が時速6.4kmもあるから、歩いて食べ物を取りに行くよりはずっと早い。だが、家でゴロゴロするような怠け者が食べ物の配達サービスを好むなら、いっそのこと、さらに出歩かずに済むようにしてやればいい。
この種の手段が目的化した実験は、ドローンだけとは限らない。昨年夏、タクシー配車用アプリのゲットが、ロンドン市民に冷えたブーブ・クリコをシャンパングラス2個付きで注文できるキャンペーンを実施した。シャンパンセットは、なんと50ポンド(約70ドル)で、自宅まで10分以内に配達される。
これほどあからさまに金融業を狙ったサービスはないだろう。サービス対象エリアはイングランド銀行などがある国際的金融街のシティとその周辺エリアのショアディッチ、クラーケンウェル、バッキンガム宮殿に隣接するベルグレービア、ロンドン市内で最も物価が高いナイツブリッジ、チェルシー、ケンジントンの8地区(東京でいえば千代田区、中央区、港区)なのだから、偶然ではあり得ない。
もしかすると、ドローンの配達サービスの実験では、実際に付加価値のありそうな分野に集中させる方がいいかもしれない。たとえば、ジップラインが世界で初めて配達ドローンを実現したルワンダでは、航空機の定期往復便で血液や医薬品を辺境の医療センターにもともと供給していた。ジップラインは配達ドローンを米国にも拡大する計画があるが、その場合、ジップラインは医療用品を米国の辺境地域(メリーランド州沖のスミス島やネイティブ・アメリカン居留地)に配達する予定だ。
他の企業は難題の多い配達ドローンを実現させようとしているが、ジップラインに倣った方がいいのかもしれない。価値があるものを配達するか、何も配達しないかのどちらかなのだ。
(関連記事:Bloomberg, “Why Rwanda Is Going to Get the World’s First Network of Delivery Drones,” “Sorry, Shoppers: Delivery Drones Might Not Fly for a While”)
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クレジット | Photography by Nicholas Kamm | Getty |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。