サンフランシスコの繁華街の中心にあるオフィスタワーの20階の片隅で、デジタルの猫やネズミがあなたを待っているかもしれない。
私は、拡張現実(AR)関連スタートアップ企業ユビクリィ6(Ubiquity6)のオフィスに、スマホ用アプリ「ユビクリィ(Ubiquity)」を使って猫やネズミを連れて行く。この夏、アンドロイドやiOS向けに発売される予定のこのアプリは、まだ開発の初期段階だが、現実の世界にバーチャルな物体を加え、他の人も自分のスマホの画面を通じて、見たり遊んだりできる。白い猫や灰色のネズミ、あるいはソファの上に浮かんだ「レイチェルがここにいた」などと書いた大きな紫色のメッセージを現実の場所に残しておくと、あなたがいなくなった後も消えず、後で戻って来て遊ぶことができるのだ。
ユビクリィ6の共同創業者であるアンジュニー・ミダー最高経営責任者(CEO)は、要するにこれはバーチャルな物体を物理的空間に置いて、後で友人が見つけてやりとりができるアプリなのだ、と説明する。
バーチャルなバスケットボールをバーチャルのバスケットリングに放り込む。デジタルのケーキの塊をばらまいて、お腹をすかせたライオンにがつがつ食べさせる。誰かに見つけてもらうために自分の写真を残しておくユビクリィではそんなことができる。スマホの電源を切っても、またアプリを起動すれば、そこにバスケットリングやライオンや写真が残されている。奇妙でかっこよく、恐らくこれがARの近い将来ではないだろうか。
デジタルと現実を結び付けるという考え方はずっと前からあったが、ポケモンGOのようなアプリのおかげもあり、近年ではスマホによるARがほぼ主流になってきた。今やアップルやグーグルは、ARアプリを構築するよう開発者たちを急がせている。マイクロソフトの「ホロレンズ(HoloLens)」やマジックリープ(Magic Leap)の「マジックリープ・ワン(Magic Leap One)」(未発売)などのヘッドセットは今のところ開発者向けであり、多くの人々にとっては、しばらくの間、スマホがこの種の現実とバーチャルの混合を体験する手段となるかもしれない。
ミダーCEOは、クライナー・パーキンス・コーフ …