元Facebook技術者による
思い出検索アプリ
写真、場所、一緒にいた人をひとまとめに整理し、あとから簡単に検索できる新アプリ。 by Signe Brewster2016.09.12
正確に1カ月前、何をしていたか覚えているだろうか? 3年前は? 「ライフロギング」と称して技術オタクが生活のあらゆる場面を記録する活動には抵抗感を持つ人もいるが、新発表のアプリ「Fabric(ファブリック)」で再び脚光を浴びるかもしれない。
FabricはiOSとAndroid用のアプリで、GPS、カメラロール、フェイスブック、インスタグラムに接続し、訪れた場所や撮影した写真のログを取ることで、時間、場所、一緒にいた人ごとにカタログ化し、表示する。
「人生の大部分がただ消え去っていくのは、記録しきれないからです。当社が作ろうとしているのは時間のインデックスです」と、ファブリックのアルン・ビジェイバージア共同創業者はいう。
アプリを使う前にはいろいろ準備が必要だ。Fabricをダウンロードしたら、ソーシャル・メディアのアカウントを接続し、すでに記録済みの写真や場所を読み取れるようにする。GPSアクセスも許可すると、アプリを実行していない状態でも記録されるようになる。しばらくすると、何年にもわたる生活の記録が、都市名や友人の名前をタップして検索できるようになり、マップ・ビューとタイムラインもあるので、空間や時間をすばやくジャンプできる。試しに自宅からウォルグリーン(全米に8000店舗以上ある老舗薬局チェーン店)まで歩いて行くと、Fabricは1日の行動を自宅から店舗までの線として表示し、途中で撮った写真をあわせて表示した。
Fabricは現在無料で、創業メンバーも今すぐ金儲けにつなげる計画はない。だがビジェイバージア共同創業者は、将来Fabricが集めるデータでもっとスマートなテクノロジーが実現する世界を見通している。スマートカーがオーナーを家まで送っていく道順を学習したり、Siriのような実質アシスタントが、大切な仕事仲間と何週間も打ち合わせを設定していないユーザーに発する警告したりする世界だ。
Fabricを共同で立ち上げる前、ビジェイバージア共同創業者はフェイスブックの技術者として、フェイスブック・タイムラインの初期のバージョンのほか「この日に」や「今年のまとめ」のような思い出プロジェクトに関わっていた。ビジェイバージア共同創業者は、ソーシャル・メディアは専門分野に特化していくと信じており、Fabricが提供するツールによって、ユーザーが特定の場面を思い出し、呼び起こした記憶をひとまとめに認識できると考えている。この構想のいちばん簡単な実現方法は、誰とどこにいたかをユーザーに伝えることだ、とビジェイバージア共同創業者はいう。
Fabricは写真や思い出を友だちとシェアするアプリではない。むしろ、毎日のまとめアルバムに近く、フェイスブック・フィードのトップに現れるような、ひとつひとつの記憶を自動収集して表示する機能が、少しだけ高度になったアプリだ。記憶の自動収集を違和感なく受け入れるのは、既にソーシャル・メディアで個々の出来事を保存しているが、手作業をもう少し減らしたかったり、もう少しプライバシーを強化したかったりするユーザーだ。
「私の意見では、『ライフロギング』というは下手な呼び方で、本当はもっとすごいのです。ログを取る機能は必要ですが、手間暇をかけたい人はほとんどいません。ログを自動的に取ることでデータを解析できるようになり、アプリの基本概念を実現できるのです」
今後の課題は、個人と社会が実際に自動ロギングに価値を認めるかどうかだ、とカリフォルニア大学アーバイン校で人間とコンピューターの相互作用と、ユビキタス・コンピューティングを研究しているギリアン・ヘイズ教授はいう。フィットネスや睡眠記録など、すでにあるツールは生活を指標化し分析しやすくしているが、自分のライフスタイルにまで取り込もうと思う人はまだ少ない。
ヘイズ教授は、生活をトラッキングすることで、ユーザーは自分自身についてよりよく学び、目標に合わせて行動を変えられる、という。たとえば、食べたものを書き取ると健康な食生活につながるように、だ。
「情報の記録と反映の中で、自動的に起きるものと意図的に行うものの間に、私たちは正しいバランスを見つけなければならないのです。私には正しいバランスがどんなものなのか分かりませんが、Fabricのようなアプリはこれを見つけ出すたくさんのチャンスを与えてくれるのです」(ヘイズ教授)
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クレジット | Image Courtesy of Fabric |
- シグニー ブリュースター [Signe Brewster]米国版
- シグニー・ブリュースターは科学とテクノロジーのライター。特に注目しているのは、たとえば実質現実やドローン、3Dプリントなど、芽生えたばかりのテクノロジーが今後どうなるか、です。記事は、TechCrunch、Wired、Fortuneでも執筆しています。