2018年の時点では、ガジェットを操作するには話しかけなければならない。だが、近い将来、唇を動かす必要すらなくなる。
MITメディアラボの大学院生アルナフ・カプルが開発したオルターエゴ(AlterEgo)という名前の試作機は、すでにこれを実現している。オルターエゴは、プラスチックを3Dプリンターで成形した装置で、見た目は白くて細いバナナのようだ。顔の片側に装着して、テレビのチャンネルを切り替えたり、電球の色を変えたり、チェスの達人技を使ったり、複雑な数学の問題を解いたりできる。カプルはつい先日、米CBSのドキュメンタリー番組「60ミニッツ(60 Minutes)」で、一言も話さず指も動かさずにピザを注文する様子を披露した。人間同士が無言でこっそりコミュニケーションをとるのにも使える。
オルターエゴを使うと「サイボーグになったような感覚はありますが、違和感はほとんどありません」とカプルはいう。このデバイスは研究プロジェクトの一環として作ったものだ。
実のところ、オルターエゴは心を読み取っているわけではない。黙読したり考えたりするとき、人間の顔面や首の筋肉がわずかに動く際に出る微弱な電気信号を拾う仕組みだ。オルターエゴに付いている電極が電気信号を捉え、Bluetooth経由でコンピューターに送信する。コンピューター内で信号をアルゴリズムで解読してから、コマンドを実行する(たとえば「明かりをつけて」など)。内蔵の骨伝導式ヘッドフォンでフィードバックを返す仕組みもあり、同じ機械を装着した人たちが言いたいことをコンピューターによる音声合成で伝えてくれる(耳を塞がないので周囲の音も聞こえる)。
身体が直接インターネットにつながっている感覚だが、装置を外してしまうと「感じとしては、すぐに普通の人間に戻れます」 …