未来の自動車が電気や水素、あるいは時代遅れのガソリンのどれで走ることになっても、データを何十億バイトも排出することは間違いない。データをどう制御し、うまく利用するかの闘いが始まっている。
日本の自動車メーカー、トヨタ自動車は4月4日に発表した新設子会社「トヨタ・コネクテッド」は、トヨタ車から集めたデータを管理・分析し、マイクロソフトと事業提携するという。収集・伝送されるデータには、地図関連データやエンジンの統計値、ドライバーの運転操作に関するデータも含まれるだろう。当面は遠隔操作で車両機能の更新やソフトウェアのバグを修正するために使われるだろうが、ドライバーの意図を予測するような、新種のインターフェイスを開発することも目指している。
過去10年間、自動車のコンピューター化が目覚ましく進み、多くの車がインターネットに接続されている。テスラはこの傾向の典型であり、3G回線経由で顧客の車のソフトウェアを更新し、インターフェイスの向上や新アプリの追加、エンジンやブレーキの性能まで調整している。
トヨタ・コネクテッドのザック・ヒックスCEOは、新会社設立の発表で「顧客は、モバイル機器での体験を車内でも体験したいと思っています。その期待に応えるのが当社のすべきことです」と述べた。
では、正確にはどのようなデータを集める計画なのだろうか。あるいは、どうやって集めるのだろうか。トヨタは明らかにしなかったが、ソフトウェア制御の範囲をさらに拡大できるようにネット接続機能とコンピューターシステムを自動車に搭載することになりそうだ。
だが、この種のテクノロジーは新たなセキュリティリスクも招き入れ、個人情報の収集・利用方法によってはドライバーの怒りを買うかもしれない。ヒックスCEOは、ドライバーの承諾なくデータは収集しないという。また、今年後半に最初のサービスを開始するとも述べた。
トヨタが研究子会社の設立で示したのは、ドライバーの現在地と運転操作を記録し、さらにデータを他の情報源と組み合わせることで、ある人がこれからどこに向かっているかを予測できることだ。ヒックスCEOは「いつもの運転パターンから外れた場合、ドライバーの好き嫌いから、これからどこに行こうとしているのか、80%の確度で予測できます」と述べた。
たとえば、ドライバーがフットボールゲームに行こうとしていると自動車が察知してルートを割り出し、駐車料金を車内であらかじめ支払える。ヒックスCEOは「研究所ではすでにこの種類のサービスを実際に稼働させている」と述べた。
自動車が今よりも多くのデータを集めれば、トヨタなど、自動車メーカー間の競争はさらに熾烈になるだろう。グーグルやアップル等の企業は、自動車によって生成されるデータを利用できるチャンスを嗅ぎ付け、iPhoneやAndroid機器を自動車向けにカスタマイズし、忠実に画面を再現したダッシュボードシステムで自動車インターフェィス分野に進出している。
たとえばGoogle Nowは、Gmailのメッセージや直近のGoogle検索から、Android Autoで自動車の行き先を予測し、自動車の経路を自動的に提案(”Rebooting the Automobile”参照)できる。一方、マイクロソフト等のクラウド・コンピューティングのプロバイダーは、自動運転(”Tech Companies Foray Into Public Infrastructure Will Magnify Their Power”参照)で頻繁に使われる高解像度地図などのサービス向けに、オンデマンドでコンピューターの処理能力を提供することに強い関心を示している。