4月上旬、ゴールドマン・サックスのあるアナリストが、遺伝子療法について厄介な質問を投げかけた。
「患者を治すことは持続可能なビジネスモデルと言えますか?」
ソーシャルメディア上の反応は非常に素早く辛辣だった。「冷酷で非道徳的」とか、「資本主義の最たるものだ」といった意見が相次いだ。
だが、アナリストの言うことにも一理ある。1回完結型の治療から儲けを出すのは並大抵のことではない。
少なくともある医薬品大手の質問に対する回答は、「いいえ」である。
グラクソ・スミスクライン(Glaxo SmithKline:GSK)は4月12日、新薬候補の遺伝子療法のいくつかを、オーチャード・セラピューティクス(Orchard Therapeutics)というロンドンのスタートアップ企業に売却した。オーチャード・セラピューティクスの株の20%と引き換えである。
グラクソにとってもはや不要となった治療は、善意の奇跡だった。破損した遺伝子を一度だけ交換すれば治療は完了し、患者の命が助かるのだから。
売却したうちの1つは、希少な免疫障害のための遺伝子療法であるストリムベリス(Strimvelis)だ。同療法でこれまでに何人かの子どもたちが治癒している。
ほかにもまだ開発中のものとして、異染性白質ジストロフィーと呼ばれる幼少期の悲惨な疾患を治 …