リチウムイオン電池の性能を2桁向上、BMWが採用決めた新素材
多くの企業がリチウムイオン電池のエネルギー密度を高める研究に取り組む中、米国のあるスタートアップ企業が性能を2桁向上させる電池材料の開発に成功した。BMWと提携して自動車への採用を目指すほか、来年にも同社の電池材料を搭載した家電製品が発売される見込みだ。 by James Temple2018.04.18
カリフォルニア州アラメダのあるスタートアップ企業は、この7年間、新たなアノード材料の開発をひっそりと進めてきた。この材料により、リチウムイオン電池の性能が大幅に向上すると期待されている。
シラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)はこの3月、表舞台に姿を現した。BMWと提携し、シリコンをベースとするアノード材料を、少なくとも数種類のBMWの電気自動車に2023年までに採用することを目指す。BMWの広報担当がウォール・ストリート・ジャーナル紙に語ったところでは、シラ・ナノテクノロジーズとの提携により、所定の容積の電池に充填できるエネルギーを10~15%増やせるようになるだろうという。シラ・ナノテクノロジーズのジーン・ベルディチェフスキーCEO(最高経営責任者)は、最終的には効率を40%向上できるだろうと述べている(「35歳未満のイノベーター35人 2017:ジーン・ベルディチェフスキー」を参照)。
電気自動車については、いわゆる「エネルギー密度」が増えると、1回の充電で可能な走行距離が伸びたり、標準距離を走行するのに必要な電池のサイズやコストを抑えられたりする。一般的な消費者向け製品で言えば、1日も経たずに充電が切れる携帯電話のストレスが解消されたり、大型のカメラや超高速の5G回線といった消費電力の大きな次世代技術を搭載できるようになったりする可能性がある。
リチウムイオン電池の容量拡大については数十年にわたって研究がされててきたが、一度に実現する割合は通常数%にとどまっている。シラ・ナノテクノロジーズはいかにして、このような大幅な効率向上を実現したのだろうか?
テスラの7番目の従業員だったベルディチェフスキーと、ジョージア工科大学で材料科学を研究しているグレブ・ユーシンCTO(最高技術責任者)が先日、MITテクノロジーレビューとのインタビューで、同社の電池技術について説明してくれた。
アノードは電池の陰極のことである。リチウムイオン電池の場合、充電されるとリチウムイオンが蓄 …
- 人気の記事ランキング
-
- The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
- Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
- These companies are creating food out of thin air 大豆・昆虫の次は微生物、 空気からタンパク質を作る 「夢の食品工場」
- The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開