配達ドローンは医薬品や血液からアマゾンの注文、ピザに至るまで、あらゆる物の輸送に使われそうだ。しかし メルセデス・ベンツとドローンメーカーのマターネット、スターシップテクノロジーズの共同研究を見ると、配達自動車は今後も宅配ネットワークの要であり続けそうだ。
メルセデス・ベンツの新しいコンセプトカー「ビジョン・バン」の屋根には、ドローン用の着陸エリアがある。車内にはドローンに貨物を積み、切れた電池を自動交換するシステムが装備される。ドローンとして使われるのはマターネット製の新型自律機M2で、ドローンの配達中、車両が次の配達地点まで移動すれば、配達に関わる無駄な時間を減らせるはずだ。
一方で、メルセデス・ベンツはスターシップと、6輪自律配達ロボット「ロボバン」も計画しており、ロンドンで試験済みだ。「母艦」配達車で配達地域まで8体のロボットが運ばれ、宅配の最後の足として400個の荷物を届ける。スターシップによると、9時間のシフト時間中に配達できる貨物数を最大120%増やせるという。
配達車両とドローンやロボットの組み合わせは、宅配網の「ラストマイル」の効率を高める手段として合理的だ。固定の物流センターからドローンを飛ばし、長距離の配達をさせて行き来するのは現実的ではない。配達先が拠点からの距離に制約される上、カバー範囲を広げるには物流センターを増設せざるを得ず高コストになるし、ドローンは小さな荷物(たとえば、マターネット製ドローンの最大積載量は2kg未満)しか運べない。
配達車両を、移動する物流ハブとして使えば、こうした問題はほぼなくせる。宅配先が集中しているエリアでは、ドローンが小さな荷物を運び、配達車両のドライバーは重い荷物を届ければよい。ドローンが急ぎの荷物を飛行距離ぎりぎりまで運び、配達中のドライバーが受け取って、その先に届ける形態もあり得るだろう。
メルセデスがスターシップと組むのはドローンに出くわした歩行者が驚かないようにすることと、配達中の貨物が略奪されないノウハウを蓄積するためだ。
もちろん、規制の問題もあるといえばある。米国の新しい連邦規則によって、ドローン関連のビジネスやサービスに門戸を開いた一方で、人混みの上や、操縦者の視界を超えてドローンを飛行させる場合、企業は特別許可を取らなくてはならない。マターネットの緊急パラシュートや許可済みの進路からは外れないようにする自律システムなど、幅広い安全処置をもってしても、規制の対象であることは変わらない。
企業がドローンで荷物を輸送し始めても、道端で停車する配達トラックはなくならなそうだ。
(関連記事:“This Plucky Robot Will Blaze a Trail Carrying Pizza,” “Now You Can Finally Use Your Drone to Make Money,” “Drones Set to Deliver Medicine to Remote Parts of the U.S.”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。