謎に満ちた拡張現実(AR)企業、マジック・リープ(Magic Leap)に懐疑的な目を向けるのは実に理にかなっている。2011年以来、20億ドルを優に超える資金を調達しているが、いまだに製品を発売していないからだ。
フロリダ州に本社を置くマジック・リープによれば、マジック・リープ・ワン(Magic Leap One)と命名された、目玉が飛び出たような形状の黒色ゴーグルのヘッドセットが今年、開発者向けにリリースされる。広報担当からの情報では、この数週間のうちに一部の選ばれた開発者に向け、早期アクセス・プログラムとしてヘッドセットを出荷するという。しかし、肝心の開発者全員への出荷時期や価格、性能については依然正確な情報は明らかになっていない。
社外の人でこのデバイスを目にした者はほとんどおらず、試用した人となるとなおさらだ。3月にリリースされた開発者向けのソフトウェア・ツールを使えば、アプリの開発は始められる。だが、実機を使えない人は、ソフトウェアによるシミュレーターを利用する以外に、アプリがヘッドセットのレンズを通して実際にどのように見えるかは把握できない。
マジック・リープはこの数年間に数十件の貴重な特許を習得しており、ヘッドセットの製品化がうまくいかなかった場合、ある種の代替計画として他社に特許のライセンス供与をする可能性がある。だが、投資家や現職の従業員、退職者へのインタビュー、3月にサンフランシスコで開催されたゲーム・デペロッパーズ・カンファレンス(GDC)で発表されたテスト映像から、期待できる性能を持った製品が近いうちに実際にリリースされる可能性がある。もし製品がリリースされれば、マジック・リープは家庭の居間に仮想のクジラ、ロボットその他の仮想物体を出現させ、本物のように見えるさまざまな物体と見ている人とのやりとりは愉快な(そして、おそらく役立つ)ものになるはずだ。ついにこの時がやって来たのだ。
「私の眼には、準備が整っているように見えます」と語るのは、マジック・リープに投資するベンチャー・キャピタルのクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB:Kleiner Perkins Caufield & Byers)のビン・ゴードン共同経営者だ。ゴードン共同経営は、GDCの最終日にヘッドセットを試している。ゴードンはレンズを通してどのような映像が見えたかは多くを語らなかったが、その映像は今までに使ったことがある他社のARヘッドセットよりも優れていたと明言した。比較対象には、ライバルであるマイクロソフトのホロレンズ(HoloLens)も含まれる(ホロレンズは2016年に3000ドル〜5000ドルで発売されたヘッドセットだが、今に至るも開発者向けに限定されている)。
ゴードン共同経営者の経験と同じ話を、マジック・リープの元事業責任者も繰り返した。昨年の晩夏か初秋頃にヘッドセットを試した際、マジック・リープ・ワンと同じ外観のヘッドセットは「すべての機能が動作していた」という。
2017年末に退社するまで開発者向けリソースとソフトウェア・ツールに取り組んでいた元従業員は、最後に開発中のヘッドセットを試用した際、機能は限られていたと話す。機能が限定されているとはいえ、スターウォーズを含むいくつかのデモ・ソフトを試している。『帝国の逆襲』で描かれた雪中のホスでの戦いが …