DNAの長い鎖と、長い鎖の特定の場所に取り付くよう設計した短い鎖を混ぜると、短い鎖は連結支柱のように振る舞う。長い鎖を所々でつなぎ合わせて3次元形状に自己組織化させるのだ。
生化学者らはこの「DNA折り紙」を使って複雑な形状を作っている。たとえば、立方体やスマイリーフェイス、さらには中国とアメリカの簡単な地図などだ。
だがこれは始まりに過ぎない。DNA折り紙は分子スケールでさまざまなデバイスを作る可能性を秘めている。生化学者らは人工酵素や薬物送達システムを作る取り組みを始めており、人体を探索するナノボットもおそらく視野に入っているだろう。
物理学者らもこのテクノロジーの可能性を研究し始めている。ドイツのマックスプランク知能システム研究所(Max Planck Institute for Intelligent Systems)のチャオ・ジョウ博士と数人の同僚たちは、既存の材料では不可能だった方法で光を操る特殊な物質である「メタマテリアル(電磁波に対して自然界の物質には無い特性を持つ物質)」を、DNA折り紙で作る方法について研究している。ジョウ博士らは3月18日に発表した論文で、光によって形を変えることで、スイッチとして動作したり、表面を「歩いたり」できるDNA構造体の作り方を示している。
近年、物理学者らは金属導体中の電子の海と光子との相互作用について詳細な研究を始めた。「プラズモン」の海に打ち込まれた光子は、その海の表面に波を作る。それは地球の海洋に小惑星が衝突する様子に似ている。
この波は情報を伝達し、さまざまな方法で操ることができる。プラズモンの海は光を吸収するだけでなく、光を散乱し、情報を伝達できるのだ。
プラズモンを利用する技術である「プラズモニクス」は、情報処理と通信の領域に新たに出現した刺激的な研究分野だ。だが誕生して間も …