銀行の床下でも「副業」、蔓延するクリプトジャッキング
他人の端末を乗っ取って無断で暗号通貨を採掘する「クリプトジャッキング」の脅威が広がっている。「EmTechデジタル」におけるサイバーセキュリティ会社ダークトレースの講演によると、同社の顧客5000社のうち1000社でクリプトジャッキングを検知したという。 by James Temple2018.04.02
サイバーセキュリティ会社のダークトレース(Darktrace)は、過去6カ月間で、同社の顧客5000社のうち約1000社のネットワーク上で密かに暗号通貨の採掘が進行していたことを検知した。同社のニコール・イーガンCEO(最高経営責任者)が3月27日に、サンフランシスコで開催されたMITテクノロジーレビュー主催の年次カンファレンス「EmTechデジタル」で述べた。
「非常に大きな問題です」とイーガンCEOはいう。ダークトレースはサンフランシスコと英国ケンブリッジに拠点を置き、人工知能(AI)を利用したデータ漏洩の発見と対応を専門とする企業だ。
注目すべき事例としてイーガンCEOは、ある欧州の銀行のデータセンターのIPアドレスから接続されているように見えるサーバーから発見された不可解なトラフィック・パターンを取り上げた。ケーブルを物理的にたどってじかに調査してみると、一人の不届き者の従業員が、床下に「暗号通貨採掘のサイドビジネス」を設置していたことが確認されたという。
他のセキュリティ会社も、ここ数カ月に発見された、秘密裏になされている暗号通貨採掘に警鐘を鳴らしている。1月にはチェック・ポイント(Check Point)が、コインハイブ(Coinhive)やクリプトルート(Crypto-Loot)といった、他人の端末を乗っ取って無断で暗号通貨を採掘する「クリプトジャッキング」のプログラムに対する注意を促した。これらはもはや、オンラインで最も流布している形式のマルウェアの1つになっている。同社は、世界中の組織の55%がクリプトジャッキングの影響を受けていると推計している(「横行する計算資源泥棒、クリプトジャッキングが世界的大流行」を参照)。
- 人気の記事ランキング
-
- Why handing over total control to AI agents would be a huge mistake 「AIがやりました」 便利すぎるエージェント丸投げが危うい理由
- An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
- OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
- How to have a child in the digital age 「あなたはもうママですね」 ネット・デジタルが約束する 「完璧な出産」の幻想

- ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
- MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。