「AIはアーティストの創造性を奪わない」アドビ・リサーチ
アドビ リサーチのガビン・ミラーは、アーティストは人工知能を活用することで面倒な作業から解放され、より創造性を高めることに時間を使えるようになるという。 by Rachel Metz2018.03.28
人工知能(AI)は、写真やビデオの編集をもっと簡単にしてくれるかもしれない。だが、創造性は失われてしまうのだろうか?
画像や機械学習が作曲する音楽など、芸術の創作にもAIの活用は進みつつある。3月26日にサンフランシスコで開催されたMITテクノロジーレビューの年次カンファレンス「EmTechデジタル」では、アドビ リサーチのガビン・ミラーが登壇。同社クリエイティブ・インテリジェンス・ラボ(Creative Intelligence Lab)が開発した、AIを利用したいくつかの試作品のビデオを見せながら、この問題について語った。
「プロジェクト・シーン・スティッチ(Project Scene Stitch)」と呼ばれる試作品では、アルゴリズムを活用して写真の前景にある醜いビルを入れ替える方法について紹介した。ユーザーがいくつかのキーワードを入力すると、ユーザーが埋めたい場所に自然に収まる他の画像をアルゴリズムが探し出してくれるものだ。
もう1つの試作品である「プロジェクト・スカイ・リプレイス(Project Sky Replace)」は、深層学習アルゴリズムを活用して写真の中から空を取り除き、幾何学的に適合する他の空の写真と入れ替えるものだ。前景画像のカラーバランスを考慮し、空の色と前景の色を合わせることで、たとえば曇りの日のエッフェル塔の写真を、夕日を浴びる綺麗な写真に変えることができる。
創造的なプロセスに対してこうしたツールは対極にあるように見えるかもしれない。だが、ミラーは、たくさんの面倒な作業からアーティストを解放し、全般的な創造性を高めることになると指摘した。
「AIに期待されるのは、そうした作業を自動化することで、私たちが本当に創造的でいられる時間がさらに増やせることにあります」。
ミラーはまた、アーティストがピカソのように、スタイルを次々と変化させていくことを可能にする創造的プロセスにおいても、AIは大きな役割を果たすようになるだろうと提言した。
「最終的に世界はもっと美しく楽しくなるだろうと考えています」。
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- レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
- MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。