火星へ向かうテスラ・ロードスター、到達後の軌道はどうなる?
スペースXが2月に火星に向けて打ち上げたロケットは、テスラの自動車を積載している。火星の軌道に到達した自動車がその後、太陽系内でどのような軌道をたどるのかを計算するのは、一般の人が想像するよりも難しい。トロント大学の研究チームがこの難題に挑戦した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.03.20
スペースX(SpaceX)による2月6日のテスラ・ ロードスターの火星横断軌道への打ち上げは、しばし世界を魅了した。このテスラ製の自動車は現在順調に航行中で、今後軌道修正をする必要はない。つまり、軌道は定まっている。
これによって興味深い疑問が湧く。この車は最後にはどうなるのだろうか? いつかまた地球に近くを通過するのだろうか? どのように最期を迎えるのだろうか。地球や火星、金星、あるいは太陽に激しく衝突するのだろうか?
トロント大学のハンノ・ライン教授らのチームの研究が、その答えを教えてくれる。ライン教授らはテスラ・ロードスターの今後の軌道を可能な限り計算した上で、今後100万年の間に地球と衝突する可能性は6%、金星と衝突する可能性は2.5%と述べている。
こうした計算は普通の人々が考えているよりも難しい。宇宙船のスピードがわかってしまえば、それに働く引力の影響が比較的安定していることから、未来永劫の軌道を予想するのは簡単なことだと思える。
ところが、そうでもないのだ。天文学者はこれまで長い間、太陽系が寿命を迎えるまでの期間の、地球のそばの小惑星や彗星、あるいは数々の惑星の運命を見極めようとしてきたが、あまり成功していない。問題は太陽系がとてつもなく複雑なことだ。太陽系を構成する天体の軌道は、数多くの他の天体の引力の影響を受けるので、それらの位置も正確に把握しなければならない。
だが、こうしたすべての天体のスピードを正確に観測するのは不可能だ。そのため、軌道計算の際に与える初期値によって、シミュレーションで得られる予測が大きく異なることがしばしばある。
「ヤルコフスキー効果」のような現象も考慮する必要がある。これは天体の熱放射によって引き起こされる運動量の変化で、天体の回転の仕方や冷却率によっても複雑に変わ …
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