KADOKAWA Technology Review
×
【1/31東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
爆速で進化し続ける
マルウェア「サトリ」が
モノのボットネットを構築中
Nicolas Ortega
A fast-evolving new botnet could take gadgets in your home to the dark side

爆速で進化し続ける
マルウェア「サトリ」が
モノのボットネットを構築中

日本語の「悟り」にちなんで名付けられたマルウェア「サトリ」が新たなモノのボットネットを構築しようとしている。ルーターから暗号通貨の採掘者、IoT機器へと標的を変え、いまなお増殖中だ。 by Martin Giles2018.02.09

新たなボットネットが広がりをみせている。2017年12月以来、セキュリティ研究者らは「サトリ(Satori)」と呼ばれるマルウェアを追跡してきた。サトリはインターネットに接続された機器を「ゾンビ」に変え、一斉に遠隔操作できるようにする。サトリに感染している機器は今のところ少数だ。しかし、サトリの作者は素早く設計に手を加え、大量のスパムメール送信、企業Webサイトの無力化、さらにはインターネット自体に大規模な打撃を与えることが可能な、強力な機械軍団を構築しようとしている。

日本語の「悟り」にちなんで名付けられたサトリには、暗い起源がある。サトリのソースコードの一部は2016年に猛威をふるった「ミライ(mirai)」と呼ばれるボットネットと似ている。ミライは何十万台ものルーターやWebカメラをはじめとする機器を操り、大量のデータ・トラフィックを送信して米国の重要なインターネット・インフラの一部に大きな打撃を与えた。攻撃によって、ツイッターやニューヨーク・タイムズ、エアビーアンドビー(Airbnb)などを含む多くの有力企業のサイトが一時的にダウンしたのだ。

ミライの作者は逮捕されたが、彼らが作りだしたマルウェアが他の犯罪者に影響を与えたことは明らかだ。サイバーセキュリティ企業アーバー・ネットワークス(Arbor Networks)の市場分析担当者マット・ビングは、「サトリが活発に開発されていることは明らかです」という。

ゾンビの侵入を防ぐためにできること
  1. Webに接続された機器の初期設定パスワードと設定を変更し、ただちにソフトウェアのアップデートを適用することが重要だ。もし、自宅のブロードバンドが大幅に遅くなった場合は、Web攻撃に使用されている可能性がある。その際は、インターネット・サービスプロバイダーに何が起きているのか確かめるべきだ。自宅のルーターがゾンビ化したかもしれないと言っても、プロバイダーに変人だと思われることはない。

結果的に、サトリは急速に進化している。当初はラテンアメリカとエジプトのルーターを標的にしていたが、2017年末頃にそれらの地域のインターネット・サービスプロバイダーがサトリをブロックすると新たな亜種が現れ、デジタル通貨の採掘(マイニング)を行なうコンピューターを標的に変えた。そして今回、サトリは再び変身を遂げた。最新バージョンはARCプロセッサー関連のソフトウェアを標的にしている。ARCプロセッサーはスマート・サーモスタットやデジタルテレビのセットトップ・ボックス、車載用インフォテイメント・システム(ナビやカオーディオを統合したシステム)など、幅広いIoT機器に搭載されているシリコンの頭脳だ。

機器の弱点を発見したサトリは、機器の所有者がパスワードや設定を初期設定のままにしている場合、その機械を制御しようと試みる。成功したらネットワーク内の別の機器に狙いを定め、さらに感染させようとする。

サトリを追跡してきたネットワーク・サービスプロバイダーのセンチュリー・リンク(CenturyLink)でセキュリティ戦略を担当するデール・ドリュー部門長によると、今のところサトリに感染した機器は4万台にすぎないという。しかし、正体不明のサトリの作者は機械を感染させるための「新たな戦術や手法の発見に関して、かなりの訓練を積んでいる」と指摘する。このゾンビ使いがより幅広いIoTを標的にすることに成功した場合、ミライ よりもさらに巨大なボットネットを作りだすかもしれない。

 

人気の記事ランキング
  1. How a top Chinese AI model overcame US sanctions 米制裁で磨かれた中国AI「DeepSeek-R1」、逆説の革新
  2. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
  3. 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
マーティン ジャイルズ [Martin Giles]米国版 サンフランシスコ支局長
MITテクノロジーレビューのサンフランシスコ支局長として、コンピューティングの未来とシリコンバレーの企業を対象に取材しています。MITテクノロジーレビューに参加する以前は、ビジネステクノロジー分野に焦点を当てたベンチャーキャピタルで調査と出版を主導しました。それ以前は、エコノミスト(The Economist)で記者兼編集者として長年にわたって勤務した経験もあります。最近は、西海岸に拠点を置くテックライターとして活躍しています。
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る