量子暗号を使った大陸間ビデオ会議、中国「墨子号」で成功
量子コンピュータの実用化が近づくにつれて、従来の暗号技術に対する安全上の懸念が大きくなっている。そこで注目されているのが、物理法則によって機密性を保証する量子暗号だ。これまで遠く離れた場所に量子暗号で情報を送ることはできなかったが、中国の衛星を使うことで量子暗号を使った大陸間ビデオ会議の実験に成功した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.02.07
物理法則のおかげで、量子暗号はコミュニケーションの機密性を保証されている。そして、コミュニケーションの機密性は、ますます重要になってきている。
量子コンピューターによって、量子暗号以外のほとんどの暗号を解読できるようになるであろうことは、物理学者にはすでに知られている。量子コンピューターの実用化が近づくにつれて、従来型の暗号システムにとって不吉な前兆が現れ始めており、商用ビジネス、政府、軍の関係者はそれぞれ、実用的な量子暗号システムが開発されるのを息を殺して待っている。
だが、そこには問題がある。量子暗号は量子情報を伝えるのに、独立した複数の光子を使用するが、最も高性能の光ファイバーであっても約200キロメートルまでしか光子を伝達できないのだ。この距離を越えると、光子が吸収されてしまって情報を伝えられない。そのため、200キロよりもずっと遠く離れた場所の間で、量子暗号による情報伝達が成功したことはなかった。
しかし、2016年に中国が打ち上げた驚嘆すべき人工衛星によって、その状況に変化が訪れている。量子科学実験衛星「墨子号」は、稼働し始めてから1年ほどの間で、数多くの金字塔を打ち立ててきた。2017年の夏、中国の研究者は地上500キロ以上離れた上空の軌道を周回する衛星に、単一光子をテレポートすることに初めて成功した。
今や墨子号は、史上初の大陸間の量子暗号サービスを提供している。研究者は、ヨーロッパと中国の間でセキュアなビデオ会議を開いて、このシステムの実験をした。史上初めて、ビデオ会議のセキュリティが物理法則によって保証されたのだ。
試験の手法は単純だ。量子暗号は、ワンタイムパッドと呼ばれる仕組みを使ってプライバシーを保証する。ワンタイムパッドは、2つのグループがメッセージを暗号化したり解読したりする際に使用する乱数列(暗号鍵)である。
かねてからワンタイムパッドの問題として、どうやって送信者と受信者だけが確実に暗号鍵を所持 …
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