AIチップで一発逆転狙う、
中国半導体産業の野望
国を挙げて世界一のAI大国を目指す中国の動きが活発だ。米国に大きな遅れをとる半導体の分野でもAIに照準を合わせ、「2020年までにニューラル・ネットワーク処理チップを量産する」との目標へ向けて開発を急ぐ。インテルやグーグルといった強豪もひしめく中、「AIで一発逆転」はなるか。 by Yiting Sun2018.02.01
北京にある清華大学のオフィス。コンピューター・チップがすぐそばにあるカメラのデータを猛スピードで処理している。データベースに保存された人間の顔を探しているのだ。数秒後、シンカー(Thinker)という名のそのチップは、中国語の音声コマンドを処理していた。
シンカーはニューラル・ネットワークのために作られた専用チップだ。だが何より特徴的なのは、その消費電力の少なさ。わずか8本の単三電池でおよそ1年間稼働する。
シンカーは実行されているソフトウェアの必要に応じて、演算能力と必要メモリーを動的に調整できる。これは重要なことだ。多くの現実の人工知能(AI)アプリケーションでは、画像中の物体認識や人間の音声を理解するために、異なる層数の異なる種類のニューラル・ネットワークの組み合わせを必要とするからだ。
2017年12月、シンカーの設計について記した論文が、コンピューター・ハードウェア設計分野でもっとも権威ある学術誌、IEEEジャーナル・オブ・ソリッドステート・サーキット(IEEE Journal of Solid-State Circuits)に掲載された。中国の研究コミュニティにとって、この上ない喜ばしい出来事だった。
シンカーは中国のテクノロジー産業全体に広がる、重要な傾向を示す1つの例にすぎない。中国の半導体産業は、現在の熱狂的なAIブームに適応するハードウェア開発競争の中で、自らの地位を固めるまたとない機会を掴もうとしている。AI成功の鍵は、コンピューター・チップが握っている。だからこそ、中国はハードウェア産業を発展させ、AIの世界で真の影響力を持つ存在になろうとしているのだ(「国家レベルでAIに賭ける中国から何を学ぶべきか」参照)。
「中国が現在のAIのトレンドを追いかけるスピードは、過去の情報技術革命に対する反応と比べても非常に速いものです」。
シンカーに関する論文の筆頭著者である精華大学マイクロエレクトロニクス研究所のショウイ・イン副所長は、ニューラル・ネットワーク・プロセッサー開発への中国の取り組みについてこのように語る。
太陽光パネルやスマートフォン製造業の拠点であるにも関わらず、中国の半導体産業は米国に比べてはるかに遅れている。中国半導体産業協会(CSIA:China Semiconductor Industry Association)によると、中国は2017年1月から9月までの間に、前年比13.5%の増加となる18 …
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