最近の超一流ゲーマーが最高なのは1回のトーナメントで何百万ドル単位の賞金を稼げることだ。これ以上があるとすればイギリスのプレミアリーグチームの選手登録名簿に載ることくらいだ。そんな状態のeスポーツの世界は、無名の状態から立ち上がり、今やオタク系のエンターテインメントというよりも、巨大なビジネスにまで成長した。中国では、国家的威信の源にさえなっている。
以前はここまでは盛り上がっていなかった。中国チームは何年も、eスポーツ界の頂点でずっと競っていた。米国ワシントン州シアトルで開催されるeスポーツのトーナメント大会「ジ・インターナショナル」(今年度の賞金総額は2000万ドル以上)でも中国チームはずっと優勢であり、戦略ゲーム「DOTA 2(Defense of the Ancients 2)」では過去5回の選手権で3回も優勝している。しかし フォーリンポリシー誌の記事が 指摘しているように、中国の文化はごく最近までビデオゲームに眉をひそめてきた。
両親は、子どもに家族とともに過ごし、中国の過酷な受験制度で勝ち残るために勉強して欲しいと思っており、子どもから携帯電話などの電子機器を奪い取り、軍隊式の訓練に耐えることでインターネット中毒を治療するキャンプに送り込んでいる。報道によれば、最も悪名の高いキャンプでは、臨床精神科医の杨永信氏が、子どもたちに主要な治療方法として電気ショックを用い、向精神薬を処方していた。その後、中国政府は治療キャンプによる電気治療の使用を禁止したが、キャンプに参加した多くの子どもたちが、一生心に傷を負ったという。
状況は急速に変化している。チーム「Wings Gaming」が北米チーム「DC」を5セットの決勝戦で破った時、中国のゲームに興味がない人までが微博(Weibo、中国版Twitter)に投稿し、Wings Gamingの勝利を祝福し、大喜びした。
ただし、西洋世界の人が想像する反応とはだいぶ異なる。米国では伝統的な教育を捨ててでも自分の夢の実現に突き進めと応援されることがあるが、Wings Gamingの張一平キャプテン(18歳)が微博でファンに感謝すると、900万ドル以上の優勝賞金をチームで分配した張キャプテンに、学校に戻るためにゲームをやめた方がよいとコメントした者がいるのだ。