ダークネットは麻薬のサプライチェーンをどう変えたのか?
「ドラッグのイーベイ」と呼ばれたシルクロードは、ダークネットという違法薬物の新たな販路を切り開いた。ダークネットは生産国と消費国を結ぶサプライチェーンにはどんな影響を与えたのか? オックスフォード大学の研究者が、麻薬取引の地図を作ることに成功した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.02.08
米国連邦捜査局(FBI)は、2013年10月、ダークネット上に構築されたWebサイト「シルクロード(Silk Road)」を閉鎖に追い込んだ。シルクロードは当時、違法薬物とその他の違法商品、サービスを販売することで悪名を馳せており、事実上の「ドラッグのイーベイ」として知られていた。
シルクロードの創設者、ロス・ウルブリヒトはFBIによって逮捕しされ、最終的に仮釈放なしの終身刑に処せられた。FBIは当時の時価でおよそ2900万ドルに相当する14万4000BTC以上のビットコインを含む資産を押収し、後にオークションで売却した。
この一連の出来事は、ダークネットへの注目度を高めた。ダークネットとは、ユーザーに匿名性を保証するトーア(Tor)という通信ソフトウェアを介してアクセスできるWebの一部である。事件以降、山のようなサイトがシルクロードの消滅によって生じた空白を埋め、匿名の購入者にさまざまな違法薬物の販売を始めた。
ダークネットによる取引は、ドラッグの売人が商品を売りさばき、使用者が手に入れるまったく新しい手段になった。ダークネット市場で取引される有害薬物は年間およそ1億5000万ドルにも及ぶ。とはいえ、この金額は、世界中で取引されている違法薬物の推定価値3000億ドルに比べれば氷山の一角にすぎない。だが、ダークネット上での売上は急増しており、そこにはさまざまな興味深い問題が浮上してきている。
違法薬物はこれまで、古くからあるサプライ・チェーンを通じて取引されてきた。サプライ・チェーンは世界中の供給と需要を結び付けている。だが、ダークネットはこの種の販売ルートを根本から変革する可能性がある。サプライ・チェーンの変化の実態について、研究者、司法当局、政治家は大きな関心を寄せており、中でもダークネットがサプライ・チェーンの供給サイドと需要サイドのどちらにより大きな影響を及ぼしているのか、注目している。
英国のオックスフォード大学のデータ科学者マーティン・ディタス博士らの研究チームのおかげで、その答えが明らかになっている。研究チームは世界で初めてダーク …
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