アップルは、Siriがバカだと思って欲しくない。
いつもは秘密主義のテック企業アップルは、作家のスティーブン・レビー(人工知能に関する著書がある)を本社に招き、さまざまな機械学習テクニックから、特に深層学習が使われている全ての製品とサービスを誇らしげに話して聞かせることで、アップルは人工知能で立ち遅れていないことをアピールしようとした。
取材結果の記事は、レビーのサイト「バックチャンネル(Backchannel)」に掲載され、優れた人工知能の技術を自慢げに語る企業を描き出した。もちろん、深層学習によって、Siriの音声認識、音声合成、自然言語処置がどう向上させているか、機械学習が他のアップル製品をどう賢くするのかに役立っているのかを聞くのは興味深い。しかし、アップルが競合他社に比べて、遅れを取り始めていることに気づかざるを得ない。
たとえば、レビーの記事で、深層学習がSiriの音声認識を大幅に強化したと説明されている2014年は、グーグルが深層学習をAndroidに導入した2年後だ。また、強化学習や教師なし学習など、人工知能の基礎分野で起こりつつある研究は、ほとんど触れられていない。ディープマインド(グーグルのAI子会社)やフェイスブックのトップ研究者による新しい人工知能研究とは対照的だ。
アップルは、多くの興味深い手法で機械学習を利用しているのかもしれないが、最高の人材を引き付けられなければ、さらに遅れを取る恐れがある。アップルの秘密主義崇拝や製品改良を重要視するやり方に、一部の人工知能専門家が興ざめているのかもしれない。人工知能分野のスターエンジニアは、同級生やライバルが一流科学誌で発表したり、大規模な会議で講演したりして称賛を得る一方で、自分は巨大テック企業で埋もれるのは嫌なはずだ。
しかし、恐らく、アップルは変わろうとしているのだ。レビー氏の記事は、アップルが「差分プライバシー」(プライバシーを侵害せずにデータを分析する手法)に取り組む研究者が、論文誌に成果を発表することを許可されたことを紹介している。アップルの取り組みが、グーグルやフェイスブックほど明かされることはないだろうが、もしアップルが、他の大手企業で起きている進歩のチャンスをSiriに逃してほしくなければ、研究者が成果を発表できるようにするべきだろう。