1月初めの湿った夕方、私はカリフォルニア州サニーベールの暗い道を走り抜けるリンカーンMKZハイブリッドの助手席に座っていた。木曜日のラッシュアワーだというのに交通量は少ないので、曲がりくねった道を快調に飛ばして行く。もし運転席に座っている男がハンドルに手を置いていないという事実がなければ、とりたてて何ということもないドライブだっただろう。
バイドゥ(Baidu)の自動運転車で移動するのは安心感があり、退屈なほどだ。バイドゥの自動運転ソフトウェア「アポロ(Apollo)」の最新バージョンを搭載したこの車は、制限速度が時速40キロから56キロに上がると速度を増し、停止信号に近づくにつれてバレエのような優雅さで減速した。そして常に必ず、方向指示器を出して曲がる合図をした。
中国の巨大検索エンジン会社バイドゥは、急速に成長しつつある自律自動車の市場では比較的新参者で、研究に着手したのはたった5年ほど前のことである。グーグルが、現在ウェイモ(Waymo)事業として知られている自動運転車プロジェクトの研究を開始したのは2009年にさかのぼる。それ以来、数多くのテック企業や自動車メーカーもまた、自動運転テクノロジーに多額の投資をしてきた。
先行企業にすばやく追いつき、人工知能(AI)イノベーションの中心としての中国の知名度を高めるために、バイドゥは通常であれば自動運転自動車を取り囲んでいる秘密性を意図的に避けている。グーグルがスマホOSのAndroidでそうしたように、使いたい者は誰でも自由にアポロを使えるように提供している。
バイドゥはアポロ 1.0を2017年7月に公開し、2017年後半にはアポロ搭載車の公道での試験を開始した。バイドゥはアポロを使用する数々の …