米国初の集合型洋上発電所「ブロック島ウインドファーム」が稼働間近になり、ついに米国の電力に水上風力タービンが加わりそうだ。
米国の風力発電は、名ばかりの開始と遅々として進まない事業で欧州がはるか先に進むのを許してしまったが、米国はまだ楽観的でいられる。よく言われるように、米国の領海内での洋上風力発電の潜在開発規模は約4200ギガワット(1ギガワットは、大雑把にいえば大型石炭火力発電所の発電能力に相当)であり、莫大なのだ。米国の大西洋側、ロードアイランド州の沖合約13kmにあるブロック島ウインドファームの出力はわずか6メガワット、タービン5台を備えているだけであり、ブロック島周辺に電力を供給するほかは、米本土に少しを送るだけ。ブロック島ウインドファームは、ほんの始まりに過ぎない。
しかし、重要な足掛かりではある。ブロック島ウインドファームに関わるディープウォーター・ウィンドは、はるかに大きな野望がある。ロングアイランド州に風力発電の電気を供給する90メガワットの洋上発電計画があるほか、200台以上のタービンで最大1000メガワットの電力をロードアイランド州に供給しようとしている。米国中の開発業者が、洋上タービンで発電する約5ギガワットの洋上発電計画を立案している。
しかし、洋上風力発電が、他の発電方式と比較して割安とはまだいえない。海上に巨大なタービンを設置するには大きなコストがかかる。ブロック島ウインドファームには3億ドルかかったが、プロジェクトは、ディープウォーター・ウィンドと電力供給企業ナショナル・グリッドの間の電力購入計画で実現可能になった。ナショナル・グリッドはディープウォーターのタービンによる発電を割増付き価格で今後20年間購入することを保証しているのだ。割り増し価格が成り立つのは、別の条件があったからだ。実は、ブロック島の住民はディーゼル発電で電気を供給されているが、発電価格は途方もなく高い。ディープウォーターに利益が出るように設定された高い電気料金でも、なお割安なのだ。
送電の問題もある。プロジェクトの一環で、ディープウォーターはブロック島と米本土ロードアイランド州の離れた地域まで送電線を設置した。しかし、たとえば、米国東海岸の大半まで送電できるようにプロジェクトの規模を拡大するのは、かなり難しい。
たとえばグーグルは「大西洋風力発電接続」と呼ばれる洋上風力発電の「バックボーン」を建設する提案に投資すると2010年に表明した。洋上風力発電の電力を、米本土のニュージャージー州からバージニア州までにまたがるハイテクの送電線の敷設を意図したプロジェクトだが、完成するまでには最大50億ドルかかると予測されている。だが昨年時点で、プロジェクトは開始しておらず、着工は延期され、深刻な危機に瀕している。
米国の洋上クリーンエネルギー革命が帆を張り続け、もう少し風を当てにできればいいのだが。