「アーバン・ディクショナリー(Urban Dictionary)」は新しい俗語や慣用句とその意味を登録するクラウド・ソーシングのWebサイトだ。アーバン・ディクショナリーは、1995年にドメイン登録されたオンライン辞書「ディクショナリー・コム(Dictionary.com)」のパロディとして1999年に始まり、その後、Web上の重要なリソースになった。事実、2005年に英国の裁判官が、ある紛争に関わった2人のラッパーが使用したスラングを理解するためにこのサイトを利用をしたのは有名な話だ。
アーバン・ディクショナリーの魅力は、言葉の定義と説明の両方の登録ができる肩肘張らない取り組みにある。ときに攻撃的な意見さえも登録を許される。新しい言葉をいち早く取り入れ、時の経過と共に派生する言葉も登録する。投票システムによって、ユーザーは登録された言葉に対する称賛または嘲罵を表明できるため、言葉の人気も明らかにできる。
現在、何百万人ものユーザーが最新のスラング、慣用句、大衆文化を知るためにこのサイトを利用している。
もちろん、アーバン・ディクショナリーにも短所はある。用語統一の規定がなく、編集者や調整役(モデレーター)が不在のため、内容が曖昧で不正確になる恐れがある。また、新しい言葉を投稿する人に関する情報はほとんどなく、登録された項目が実際に言語の変化を反映しているのか、少人数のグループに影響を与えている言葉にすぎないのかも不明だ。
とはいえ、アーバン・ディクショナリーは新しい言葉を捉えるのにどれだけ長けているのか、オンライン辞書を作成する従来の取り組みと比べてどうなのか、という疑問がわいてくる。
ロンドンのアラン・チューリング研究所のドング・グエン研究員と同僚が実施したアーバン・ディクショナリーとその内容を、別のクラウド・ソーシング辞書「ウィクショナリー(Wiktionary)」と比較する研究で、上の問いに対するある種の回答が得られている。「我々の知る限り、この規模でアーバン・ディクショナリーを体系的に研究するのは初めてのことです」とグエン研究員らは述べている。
ウィクショナリーはよりフォーマルなクラウド・ソーシングのアプローチをとっているため、比較対象として興味深い。ウィクショナリーは、ウィキペディア(Wikipedia)と同じウィキメディア(Wikimedia)財団によって運営されているウィキペディアの姉妹サイトだ。ウィクショナリーは言葉の定義のみを登録し、編集の方法に関するガイドラインを設けている。定義の構成に関する指針もユーザーに示している。モデレーターが内容を編集し、荒らし行為を取り締まり、質の高い内容を生み出すことを目指している。当 …