イギリスの半導体設計会社ARMホールディングスがスーパー・コンピューター専用プロセッサを発表した。
ARM(ソフトバンクが7月に買収を発表)製のチップは、世界中のモバイル機器のほとんどに搭載されている。だが、今回発表されたのは高性能コンピューティング専用の新しいタイプのチップ・アーキテクチャで、大量のデータを同時に処理できる、いわゆるベクトル処理を用いており、金融計算および科学計算などの応用に適している。
ARMがスーパー・コンピューターに関わるのはこれが初めてではない。富士通は7月、理化学研究所計算科学研究機構のスーパー・コンピューター「プロジェクト京」の後継機を、ARMチップで開発すると発表している。実際、22日に発表された「京」の後継機が、新しく発表されたARMアーキテクチャにとって初のライセンス先になる。
ARMはエネルギー効率の高いプロセッサを開発することに定評があり、モバイル機器用途で人気が高い。ARMのプロセッサはスマートフォンやタブレットのバッテリーを食わないため、アップル、クアルコム、エヌビディアなどがARMプロセッサの設計ライセンスを得ている。熱放出が少なく、低消費電力というARM製チップの特徴は、そのままスーパー・コンピューターなど大規模なデータ処理アプリケーションでも、望ましい特性なのだ。
インテルは、ソフトバンクによるARMの買収に不安になっているはずだ。かつて市場を支配していた半導体メーカーであるインテルは、モバイル機器向けのチップ開発の機会を逃し、モバイル分野でのARMの優位を許してしまった。スーパー・コンピューターはインテルが今でも中心的な役割を担う分野だが、現在、世界最速のスーパー・コンピューターは中国製チップを使っており、ARMが張り合おうと目論むのはインテルではなく中国勢なのだ。
ただし、ARM製チップを採用したスーパー・コンピューターが今後どれだけ成功するかは未知数だ。富士通の「京」後継機が稼働する2020年(予定)が、最初の大きな試練になる。インテルはその全行程を注意深く見守ってる。
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