2013年に初めてクリスパー(CRISPR)を使用して生きているヒト細胞が編集されて以来、科学者がずっと語っていることがある。疾病治療へのクリスパー使用の可能性は実質的に無限というものだ。
この数年間にクリスパーは猛スピードで進展しており、このテクノロジーを商業化する企業も出現してきた。現時点での観測で、欧州と米国の患者は2018年にもクリスパー治療を受けられる可能性がある。
クリスパーが待望される理由は、たった1回の注入ないし注射で、もっとも質(たち)の悪い遺伝性疾患やがんのいくつかを治癒できる可能性があるからだ。それらの疾患には現在治療の選択肢が存在しないかほとんどないものも含まれている。科学者は、クリスパーを適用して人間のDNA上の遺伝子の誤りを修復したいと願っている。クリスパーなら病気の根源に到達可能なのだ。
夢が実現したと思えるかもしれない。しかし、現実はそれにはほど遠い。研究者はすでに臨床試験の開始日を延期している。しかも、2018年かその翌年に開始予定の研究の治療対象は、いくつかの希少疾患に罹患している少数の患者のみだ。クリスパーがより一般的な疾患のより多くの患者に適用可能になるまでに、おそらく何年もかかるだろう。
マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置くクリスパー・セラピューティクス(CRISPR Therapeutics)は、初めて欧州の規制当局の許可を申請した企業になる。試験開始予定は2018年だ。同社は遺伝子編集テクノロジーを利用して、遺伝性血液疾患のベータサラセミア(地中海性貧血)に罹患した患者の遺伝子異常を修復しようとしている。
クリスパー・セラピューティクスのサマース・クルカルニ最高経営責任者(CEO)によると、同社は鎌状赤血球症のクリスパー試験を開始する承認を得るために、米国食品医薬品局(FDA)への申請も、2018年前半に予定している。
約1万5000人の欧州人がベータサラセミアに罹患し、約10万人の米国人が鎌状赤血球症だ。両遺伝子疾患とも、 …